性暴力を乗り越え、人生を懸命に生きる人たちのことを「サバイバー」と呼ぶ。米国で強姦被害に遭った横浜市のフォトグラファー、大藪順子さん(42)もその1人だ。大藪さんの魂を暗闇から引き上げてくれたのは現地の「性暴力対応チーム(SART)」によるサポートだった。「支援が早ければ早いほど傷ついた心身は回復しやすい」と、日本でも態勢の充実を訴えている。 大藪さんが事件に巻き込まれたのは米国で新聞社のカメラマンとして働いていた28歳のとき。深夜に人の気配で目を覚ますと、家の隅に見知らぬ男が立っていた。「助けて!」と叫ぼうとしたが恐怖で声が出ない。「黙らないと殺すぞ」とすごまれ、初めて覚えた「死」の感覚に体が凍りついた。 被害によって自尊心を奪われ、代わりに心を支配したのが、行き場のない恐怖と怒り。フォトグラファーとして現場を生き生きと走っていた自分が、見知らぬ男性と目があっただけでパニックに陥ってしま