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ブックマーク / www.foreignaffairsj.co.jp (74)

  • FOREIGN AFFAIRS JAPAN

    原爆が戦争終結の時期を早めたという議論の根拠はとぼしく、「たとえ原子爆弾を投下していなくても、ソビエトの参戦によって、十一月前には日は降伏していたかもしれない」。加えて、米国の指導者のなかで、一九四五年の春から夏の段階において、「五十万の米国人(将兵)の命を救うために」原爆を使用すべきだと考えていた者など一人としていなかった。広島や長崎への原爆投下を可能にしたのは、二十億ドルもの資金を投入したプロジェクトのもつ政治的・機構的勢い、そして、第二次大戦の熾烈な戦闘を通じて、(市民を戦闘行為に巻き込まないという)旧来の道徳観が崩れてしまっていたからにほかならない。この道徳観の衰退こそ、後における核兵器による恐怖の時代の背景を提供したのである。ドイツや日の軍国主義者たちだけでなく、なぜ、米国を含む他の諸国の道徳観までもがかくも荒廃していたのか、この点にこそわれわれが歴史の教訓として学ぶべきテー

  • 中国――不動産バブルの崩壊か

    2011年10月、上海の不動産開発業者が突然高級マンションをそれまでの3分の1の価格で販売し始めた。沿岸部の温州や石炭資源地帯である鄂?多斯(オルドス)では、不動産価格の暴落によってクレジット危機が起き、ビルの屋上から飛び降り自殺をする者が相次ぎ、国を脱出する者もいる。いまや中国不動産バブルははじけつつある。これまで住宅市場を支えてきたのは強気の不動産開発と中国の個人投資家たちだった。ごく最近まで不動産開発業者は、建設が終わらぬうちにすべてを完売できる状態にあったし、個人投資家は一人で複数、ときには数十もの住宅マンション投資用に買い上げてきた。投資家の多くは、さらなる値上がりを見込んで、これらの空き物件のまま維持し、各地にだれも住んでいない住宅や団地などの広大な「ゴースト地区」が出現していた。だが、開発業者は住宅在庫を維持していくための融資を調達できなくなり、2011年夏までには、つ

    gauqui
    gauqui 2011/12/26
  • シリアへの軍事介入を求め始めた反アサド勢力 ――「保護する責任」とアラカルトの軍事介入

    シリアへの軍事介入を求め始めた反アサド勢力 ――「保護する責任」とアラカルトの軍事介入 Syria: Military Intervention A La Carte いまやシリアの反体制派集団は国際社会に対して軍事支援を強く求め始めている。「自由シリア軍=FSA」のリヤド・アル・アサド大佐は「必要なのは国際社会が(われわれの地上での軍事活動への)後方支援を提供してくれることだ。さらに飛行禁止空域の設定、バッファー(緩衝地帯)の形成、そして現体制にとって重要とみなされる戦略ターゲットへの空爆も望んでいる」と発言している。だが、民間人に対する攻撃がこれ以上エスカレートし、外交的、経済的制裁ではアサドの行動を変えることができなければ、軍事介入を選択肢の一つとして検討せざるを得なくなるとはいえ、話は簡単ではない。反体制派が外国に対して「軍事支援を選択的に」求めているからだ。彼の発言は、いまや鮮

  • 地球温暖化リスクと原発リスク ―― フクシマの教訓と新小型原子炉のポテンシャル

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    gauqui 2011/11/11
  • イランは数カ月で核兵器を獲得する ――イランに対する軍事攻撃か、それとも、 核武装と核戦争のリスクを受け入れるか

  • 環太平洋パートナーシップと中国の台頭 ――日本のTPP参加の地政学的意味合い

    アメリカのアジア重視路線>  10月14日のニューヨーク経済クラブにおける演説で、ヒラリー・クリントン国務長官は「世界の戦略、経済的中枢は東へと移動しつつある」と表明し、アメリカのアジア・シフト路線を明確に打ち出した。国務長官の発言は、アジア諸国が中国の台頭、そして、アメリカのアジアへのコミットメントの先行きを懸念するなか、「太平洋国家としてのアメリカの役割」を再確認しようとするワシントンの試みの一環だった。バラク・オバマ大統領も、アジアの首都を歴訪し、ハワイでのAPEC首脳フォーラムのホストを務める際に、このメッセージを表明する予定だ。  この地域政策の中枢は貿易領域にある。米韓自由貿易協定への米議会の承認を取り付けたオバマは、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)への合意をとりまとめることで、アメリカのアジアにおける経済的役割を明確に確立したいと考えている。現在、オーストラリア、ブル

    gauqui
    gauqui 2011/11/10
  • G20―ユーロ危機と中国の思惑

    中国は何を見返りに求めるか>  専門家のなかには、これまで北京との摩擦の種だったダライ・ラマの訪問受け入れをめぐってヨーロッパ諸国が立場を後退させるのではないか、人権問題をめぐって中国に圧力をかけるのを止めることに合意するのではないかと考える者もいる。 保守系の中国の新聞であるグローバル・タイムズ紙は「キャッシュを提供する代わりに、EUは中国製品に対してもっと市場を開放すべきだし、中国が市場経済国であることを認めるべきだ」と主張している。G20の宣言文ドラフトにあるように、「グローバル貿易をよりなめらかにし、投資バランスを回復するために中国は人民元の柔軟性を高めるべきだ」と共同宣言でやり玉に挙げられるのを止めさせることが、取引にされるかもしれない。 そうなる可能性もある。だが、ヨーロッパの民主政治の現実をみれば、より広範な取引の構図がみえてくる。民主体制のもとでは、選挙で選ばれた指導者

  • ウォール街デモが示す 新しい民主主義の可能性 ――市民の苦境を無視する政治への反乱

    <タハリールからウォールストリートへ> 「ウォール街を占拠せよ」というスローガンを掲げた抗議行動に、なぜ多くの人々が共感を示しているのか。その理由は、運動が「経済的不正義」という人々に広く共有されている問題意識に訴えかけているからだけではなく、政治的不満と政治的希望を明確に表明しているからだ。 抗議行動がローアーマンハッタンのウォール街から全米の都市や町へと広がりをみせていくにつれて、企業の強欲さや所得格差に対する人々の怒りが米社会に充満していることがますます明らかになっている。だが、同様に重要なのは、民意をくみ取る政治的代議制度が欠落していること、あるいはうまく機能していないことへの反発が示されていることだ。 どの政治家や政党が効率に欠けるとか、腐敗しているとかいったことではなく、政治制度における代議機能そのものがうまく働いていないことに対する人々の怒りが表面化しつつある。 ウォール街

  • ブロークン・コントラクト ―― 不平等と格差、そしてアメリカンドリームの終焉

    <分水嶺としての1978年>    かつてはこうではなかったのか。「昔みたいにはいかない」というのは当だろうか。1978年当時と現在の生活を比べてみれば、どう感じるだろうか。 教育があり、ある程度快適な生活を送っている、アメリカのどこかで暮らす中産階級のカップルは、1978年当時どのような生活を送っていただろうか。現在の生活と比べて、当時の生活はどの程度不便だっただろうか。 男性は、茶色がベースで金色のアクセントが入った襟の大きなポリエステルのプリントシャツをはおり、べっ甲フレームのメガネをかけていた。女性はハイウエストのナイロン地のVネックドレスに、上げ底のクロッグが定番だった。 朝のコーヒーはマックスウェルハウスのドリップコーヒー。乗用車はAMC・ペーサーのハッチバックで、エアコンは壊れ、テープデッキはテープを巻き込み続ける代物だ。女性たちは、夕を少し気の利いたものにしたいときには

  • FOREIGN AFFAIRS JAPAN -富める者はますます豊かに

    <グローバル化が格差を広げたのか>  米経済はまるで継ぎ目に沿って引き裂かれつつあるかにみえる。失業率はほぼ10%と、この30年間でもっとも高いレベルにある。差し押さえによって自宅を明け渡した人は100万人にも達し、人々の実質所得は、大恐慌以降のいかなる時期と比べても大きく、しかも急激に落ち込んでいる。解雇された人々の多くは、これまで自分に富と保障をもたらしてくれた、組合に守られた安定した雇用につくことはもうないだろうと先行きを悲観している。実際に、そうなるのかもしれない。 だが、この悲劇のさなかで奇妙なことが起きている。金融メルトダウンのきっかけを作ったグローバル金融の巨人たちを含む、アメリカ富裕層がますます豊かになっているのだ。それも、少しばかり資産を積みました程度ではない。これまでと比べてさえ、非常に大きな富を手にしている。 2009年の数字をみると、アメリカ富裕層トップ5%

  • ハマスを無視して、中東和平は成立しない ―― ハマスとの交渉を中東和平の全体図に位置付けよ

    <中東和平交渉とハマスを両立させるには>  イスラエル・パレスチナ和平を阻む最大の障害は、パレスチナがヨルダン川西岸の入植地の解体を求めていることでもなければ、イスラエルと西岸の多くを隔てる隔離壁の存在でも、あるいは、イスラエルの政治が右傾化していることでもない。それは、150万のパレスチナ人が暮らすガザ地区でハマスが事実上の政府として地位を確立しつつあることだ。  ハマスは、ガザからほぼ定期的にイスラエルをロケットで攻撃するか、他の勢力がガザを拠点にイスラエルを攻撃するのを認めている。この現実が、より穏健な立場をとり、現在は西岸とガザの一部を統治するマフムード・アッバスとサラーム・ファイヤード率いるパレスチナ当局(自治政府)にとって、高まる一方の脅威となっている。  パレスチナ当局の指導者はイスラエルとの交渉と制度構築を開始することがパレスチナ国家を手に入れるための最善の方法とみている。

  • 企業の知的財産を盗み出すサイバーセフトの衝撃

  • 9・11後の10年とこれからの10年――課題は外的脅威から国内問題へ

    CFRインタビュー 9・11後の10年とこれからの10年 ――課題は外的脅威から国内問題へ Lost U.S. Opportunities After 9・11 テロから10年という節目を迎えて9・11に再び関心が集まったが、人々はこれまでも9・11という文脈のなかだけで暮らしてきたわけではない。たしかに、飛行機による移動、情報活動、国土安全保障など、9・11によって変化したものもある。だが、歴史家が9・11以降の10年間を後に描きだすとすれば、9・11だけでなく、技術革新、2000年のドットコムバブルの崩壊、2008年の金融危機、現在われわれが直面している財政・債務危機、中国の台頭、さまざま戦争、そしてアメリカ政治の統治問題を歴史的文脈に位置づけて解釈するはずだ。われわれの生活レベル、アメリカの生活の質、そして世界でリーダーシップを発揮していく能力に対する最大の脅威は国の内側に存在す

    gauqui
    gauqui 2011/09/13
    リチャード・ハース
  • FOREIGN AFFAIRS JAPAN -ウィキリークスの今後の焦点は ―― 世界中の反体制派が危険にさらされる恐れがある

    この10年間、外交官たちは、これまでのように情報を相手国政府の高官や中級官僚との公的なやりとりにばかり依存するのではなく、重要な情報を人権活動家、反体制派、政策面で反発している(抑圧)政権内の反政府派から入手するようになった。こうした文書には、中国の反体制派、中東の反体制派が自国の政府について何を言ったかが示されており、そこには個人名も示されている。・・・ より多くの情報が今後公開されると考えられている。中国や中東諸国のように人権概念を重視しない諸国は、文書に名前のある人物の一部を検挙し、弾圧するかもしれない。(J・ベリンジャー) 聞き手はバーナード・ガーズマン(cfr.orgのコンサルティング・エディタ-) <さらに公開されれば情報源が危険にさらされる> ―― あなたが今も国務省の法律顧問だとしよう。司法長官が「ウィキリークス問題にどう対処すべきか」とあなたにアドバイスを求めてきた。さて

  • 市場ボラティリティの政治ファクター

    市場がボラタイルなのは、経済の成長率が鈍化すると考えられ、しかも、政治的不作為と膠着状態が存在するためだ。政策面での不確実性もリスク認識とボラティリティを高めている。欧米経済が停滞している程度なら、新興国は高い成長率を維持できるだろう。だが、欧米経済が深刻な不況に陥った場合には、新興国もその余波を受ける。非常に大きな輸出需要が消失することになるからだ。・・・短期的に、準備通貨してのドルの代替策が浮上してくることはない。ユーロが安定すれば、第2の準備通貨になれる可能性はある。人民元も貿易決済通貨としての役割を拡大していくだろうが、少なくとも今後10年は準備通貨としての役割を果たすのは難しいだろう。・・・

  • FOREIGN AFFAIRS JAPAN - 新政権の鍵を握る小沢一郎を考える(部分公開)

    明治を意識した小沢  小沢は明治時代を強く意識し、自らを一八六七年に江戸幕府を倒した人物たちに重ね合わせて考えている。少年時代の小沢は慎み深く勉強熱心だった。彼は、明治的価値をもつ気丈な母親から、ピューリタン的な生活規範を重視する明治の価値観――慎み深さや、「男の子は泣くものではない」、「不平を言わず、言い訳をせず」といった価値――を教え込まれた。若き日の小沢は、徳川幕府を倒した人々に強く魅了された。いまでも彼は、その先達たちが世界へと目を向け、工業、教育、軍事、政治面で彼らがそこに見出した枠組みを導入した明治期が、日の最善の時代だったと考えている。事実、小沢は著作の一章を、大久保利通や伊藤博文など明治期の指導者の華々しい業績の論考にあて、そこで熱っぽい議論を展開している。 たしかに小沢は、徳川幕府を倒し明治期に改革を断行した人物たちと、その資質の一部を共有している。小沢同様、明治期の

  • 「リスクフリー」の輝きを失った米国債

  • アメリカ経済――悪夢のシナリオ 政治的チキンゲームが経済を崖から突き落とす?

    <債務上限の引き上げをめぐる政治的瀬戸際作戦> 「国債を発行する権限を政府は失ってしまった」。オバマ政権がこう表明せざるを得ない事態に追い込まれるまで、あと3週間しか残されていない。この事態を避けるには、民主・共和両党が立場の違いを克服して、債務上限の引き上げを認める法案を成立させなければならない。だが、立場の違いを埋めるどころか、両党は、合意を遠ざけるような姿勢に終始している。 交渉が始められた当初から、共和党は「民主党が大幅な歳出削減に応じない限り、債務上限の引き上げには応じない」という立場をとってきた。一方、民主党は、歳出削減は妥当だとしながらも、これをペンタゴンの予算にも適用し、一方で増税策をとるように求めている。共和党はこれに反発している。 上院共和党はたんに反発するだけでなく、連邦予算の均衡を求める憲法修正を支持すると表明している。この修正が成立すれば、赤字財政をとってもおかし

  • 江沢民とは何者だっ たのか

    「現在の共産党は、1912年以降の中華民国の時代に始まり、56~76年のスターリン主義の浸透によって崩壊する資主義の経済ブームを今に再現し、引き継いでいると自任し、変革の政党としての継続性を持たせようとしている。この文脈で見ると、北京が2005年に、20世紀初頭の経済ブームの担い手だった台湾の国民党と歴史的な和解を果たしたことは、台湾にとってよりも、むしろ中国経済のシンボルとして大きな意味をもつ」 <アメリカ人が書いた江沢民の自伝?> アメリカ投資バンカーであるロバート・ローレンス・クーンが書き下ろした『中国を変えた男』(仮題)は、中国政府がクーンに閲覧を認めた資料やインタビューを基に、最近まで中国の国家主席ポストにあった江沢民の人生を描写したポートレートである。ただし、様々な読み方ができるこの著作をどうとらえるか、これが大きな課題となる。  もっとも簡単なのはこの著作を評伝としてとら

  • 中国経済の今後が明るくない三つの理由