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ブックマーク / lju.hatenablog.com (9)

  •  円城塔 “Four Seasons 3.25” - three million cheers.

    タイムトラベルに「記述の確定」という概念を絡めた短編。 設定上のポイント 「願いが叶う」:二人の理論がい違ったら、どちらが優勢なのか民意が判定する。 「確定記述」:整合性が必要。「辻褄を合わせなければならない」ということはコストとして捉えることができる。 「隙間理論」:「確定記述」の隙間に、記述されていない好きなことを埋められる技術。 この作品の文章はすべて現在時制で書かれている。基的に過去時制は出てこない。 ……と書いてあらためて気付いたけど、日語には、現在時制・過去時制というものはあっても未来時制というものがないようだ。 とはいえ、「二人はもっと深い仲になる」というのは明らかに未来について語っていることだと理解できたりはする。 [以下、ネタバレ含む] 「円城塔なのにわかりやすい」という感想をいくつか見たのだけど……そこまでわかりやすいかな? いや、わかりやすいのは確かか。「たぶん

     円城塔 “Four Seasons 3.25” - three million cheers.
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    gauqui 2013/02/25
  •  入不二基義 “相対主義の極北” - three million cheers.

    相対主義の極北 (ちくま学芸文庫) 作者: 入不二基義出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2009/01/07メディア: 文庫購入: 11人 クリック: 55回この商品を含むブログ (34件) を見る 「相対主義」と「独我論」(あとこれに「構築主義」を加えてもいい)というのは、得てして即座に否定されがちなものだけど、その否定をきちんと論理を追って成し遂げるのは実は難しい。たいていの場合そのようなプロセスを経ることなく、単に自明な批判属性として扱われている気がする。『それでは独我論になってしまう』『それでは相対主義に陥ってしまう』みたいな言われ方として。 これらへ接する態度としては、日常のなかでそれらは端的に不必要であるという言い方が無難であり充分であると思ってはいるのだけど(『それを考えなくても/考えないようにしないと社会はまわらない』)、それはそれとして、実際どうなのかというのをどこか

     入不二基義 “相対主義の極北” - three million cheers.
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    gauqui 2013/02/12
  •  ハンヌ・ライアニエミ “量子怪盗” - three million cheers.

    “THE QUANTUM THIEF” 2010 Hannu Rajaniemi ISBN:4153350060 量子怪盗 (新★ハヤカワ・SF・シリーズ) 作者: ハンヌ・ライアニエミ,酒井昭伸出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2012/10/11メディア: 単行購入: 3人 クリック: 48回この商品を含むブログ (30件) を見る 帯と解説で「ニュー・スペースオペラ」と書かれてる上に『量子怪盗』なんてタイトルなのでどうにもB級感が漂うんだけど、SFとしておもしろかった。“SFとして” というのは、物語進行とかキャラクターを優先しすぎてSF要素が単なる付け足しとか舞台説明だけになってしまわず、世界や出来事ときちんと絡み合っている、という意味で。 とは言いながらも概要説明としては、巻末解説で書かれている “シンギュラリティ発生以降を描いた、ポストサイバーパンクなニュー・スペースオペ

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    gauqui 2012/11/26
  •  伊藤計劃・円城塔 “屍者の帝国” - three million cheers.

    屍者の帝国 作者: 伊藤計劃,円城塔出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2012/08/24メディア: 単行購入: 43人 クリック: 1,717回この商品を含むブログ (191件) を見る 読んだ。 うーん……。どうだろう。 非の打ち所ない名作、ではなく、 歴史に刻まれる奇書、ぐらいかな……。 わりと複雑な思いはある。 0. まず、伊藤計劃が完成させることができなかった未完の小説を、円城塔が引き継いで完成させた、ということ。 “ディファレンス・エンジン”を読むときにあれがギブスンとスターリングの合作だということは知ってても知らなくてもあまり影響ないように思うけれど、“屍者の帝国” を読むにあたっては、ふたりの作家によって生み出された経緯を知っておくことは不可欠だと思う。 屍者制御技術/ネクロウェアによって屍者を使役するという作中の設定は、この小説がどのように書かれたのかということ

     伊藤計劃・円城塔 “屍者の帝国” - three million cheers.
  •  “プライマー” - three million cheers.

    “Primer” Director : Shane Carruth US, 2004 プライマー [DVD] 出版社/メーカー: バップ発売日: 2006/03/24メディア: DVD購入: 1人 クリック: 196回この商品を含むブログ (35件) を見る 0. いわゆるタイムトラベル物の映画。 決して、予算を潤沢に使った一大娯楽映画というわけではない。どう見ても低予算、カメラワークもチープだし、最初の方でのガジェットの原理説明のあたりも冗長で間の抜けた感じが否めない。 でもこの映画質はそこにはない。 解釈の多様性、終わりなく考察を喚起する、というところに意義がある。 1. タイムトラベルが扱われている映像作品というのは、それがたとえ過去へたった一度きり戻るだけというシンプルなものであっても、見ている者の頭を悩ますに充分なものだ。時間を跳躍するなんてことは一度おこなわれるだけでもパラ

     “プライマー” - three million cheers.
  •  イーガン “プランク・ダイヴ” - three million cheers.

    “The Planck Dive and Other Stories” 2011 Greg Egan ISBN:4150118264 プランク・ダイヴ (ハヤカワ文庫SF) 作者: グレッグ・イーガン,鷲尾直広,山岸 真出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2011/09/22メディア: 文庫購入: 6人 クリック: 120回この商品を含むブログ (64件) を見る 短編集。今までに出てるイーガンの短編集のなかではもっともハードかも。 以下、一部ネタバレ含む感想。 クリスタルの夜 人工知性体に関する倫理をめぐる葛藤の話、と思いきや、造物主から離脱する被造物、というSF定番の話。(イーガン作品で言うと “順列都市” もそういう話だった。) 読んでいくうちに、なんか一回読んだことあるなこれ……と思いつつも記憶が完全によみがえらなかったのだけど、たぶんSFマガジン掲載時に読んだんだと思う。冒頭に

     イーガン “プランク・ダイヴ” - three million cheers.
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    gauqui 2011/09/27
  •  名和晃平 “シンセシス” 2010.06.11. - 2011.08.28. - three million cheers.

    名和晃平 ――シンセシス Kohei Nawa ‒ SYNTHESIS 東京都現代美術館 (展覧会公式サイトより抜粋) 「Cell」という概念をもとに、先鋭的な彫刻・空間表現を展開する名和晃平(1975年生まれ)の個展を開催します。 名和はビーズやプリズム、発泡ポリウレタン、シリコーンオイルなど流動的な素材・メディアを情報社会における感覚や思考のメタファーとして扱い、デジタルとアナログの間を揺れ動く身体と知覚、感性のリアリティを表現しています。展では、国内外での多数の受賞・発表をふまえ、パラレルに姿を変える名和作品の根幹を各カテゴリーの方向性や相互の関係から探り、そこにかいま見える今後の姿を追求します。 視覚の変容や抽象化・ずれ、といったことが、多くの作品で共通するテーマ。 見えているものと、その内実との不一致。 たとえば “BEADS” シリーズでは鹿の剥製が透明なビーズで覆い尽くされ

     名和晃平 “シンセシス” 2010.06.11. - 2011.08.28. - three million cheers.
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    gauqui 2011/08/23
  •   “魔法少女まどか☆マギカ” - three million cheers.

    0. 今年のアニメで最高峰に位置することに誰も異を唱えないであろう作品。 「魔法少女物」という見掛けのジャンルや、キャラクターの画風にまどわされてはいけない。この作品が持つ物語としての完成度は、際立っている。構成や設定・演出はどれも計算し尽くされていて、アニメという形式が持つ手法を最大限効果的に駆使してつくられている。漠然と見ているだけでは気付かないような隠された表現*1も含め、情報量は膨大だ。にもかかわらず全体としては、確実に視聴者に突き刺さる強度ある物語へ収束している。 何よりも、その展開の見事なこと。 9話までは常に、前の回以上の驚愕を上乗せし続けながら加速。そして10話は、たったひとつの回でそれまですべての回の累積をも越える密度を備えている。(これがぜんぜん誇張ではないことは、見た人なら納得してくれると思う) 終わって振り返ってみると、実は大筋ではまったく奇矯なことはしていなくて、

      “魔法少女まどか☆マギカ” - three million cheers.
  • [読書] グレッグ・イーガン “スティーヴ・フィーヴァー” - three million cheers.

    “STEVE FEVER” 2007 Greg Egan 同名タイトルのアンソロジー内にある一篇。他にも良い作品はいくつかあったけど、これが群を抜いておもしろかったので、とりあえずこの作品だけ記録しておく。 計算能力を備えた元医療用のナノマシン群体が、人間たちにはよくわからない奇妙な活動をおこなっている――という話。 1. この群体は、人類全体を凌ぐ計算能力を持ちヒトの脳の解剖学的構造も余さず把握しているのに、自分たちはまだ人間の“意識”というものを理解できていない、と自覚している *1 。非人間知性であるところの彼らは、ある仮想現実上の存在に“意識”が備わっているかどうかを判定しようとしているのだけど、こういうときふつうだったらチューリング・テストや中国語の部屋のような話になりがちなところを、「演劇」という方法が選ばれているのが新鮮だ。“意識”という内実の有無を確認すべき「主人公」がいて

    [読書] グレッグ・イーガン “スティーヴ・フィーヴァー” - three million cheers.
    gauqui
    gauqui 2011/07/31
    書評
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