道東で放牧中の牛が次々とヒグマに襲われ、命を落としている。驚くべきことに、これは同一個体による犯行と考えられているのだ。ヒグマへの恐怖と不安が広がる、現地からのレポートをお届けする。 牛を真っ二つにする怪力 キムンカムイ(山の神)。アイヌの人々はヒグマを畏れ、こう呼んできた。だが、神聖な山の神も、人に危害を加えればウェンカムイ(悪い神)となり、捕獲すべき対象になってしまう。 一頭のヒグマが今、道東で3年にわたり、人間社会を蹂躙し続けている。 「2019年からOSO18と呼ばれる大型のオスのヒグマが、標茶町と厚岸町で放牧された牛を襲い続けているのです。これまでに57頭が負傷し、そのうち26頭は死亡しています。 最初に被害があってから3年が経つにもかかわらず、OSO18は駆除できていません。これだけ長期間逃げ続けるヒグマなんて、これまで聞いたことがない」(厚岸町水産農政課職員で町営牧場長を務め