切り裂きジャックと呼ばれた殺人鬼が次々と五人の女性を殺害したのは、いまから約一二〇年前――、一八八八年のことだ。 五件の犯行は八月三一日から一一月九日までの短期間に起きたが、その殺害方法がきわめて残忍、猟奇的なことから、犯人は“切り裂きジャック”と呼ばれた。呼び名のとおり、ジャックは女性たちの喉笛を切って殺害すると、その死体を切り刻み、子宮など臓器の一部を持ち去ったりしたからだ。 被害者の女性たちは、いずれも娼婦だった。 これから書く事件のあらましについて、お食事中の方、もしくはグロテスクなお話が苦手な方はページを閉じることをお勧めします。 事件がいかに猟奇的だったかというと――、たとえば、二人目の犠牲者となったアニーは腸が引き出され、右肩にかかっていた。三人目の犠牲者キャサリンは顔面をギザギザに切られ、臓器の一部を持ち去られていた。最後の犠牲者メアリーに至っては、正視できないほどに全身を