取材・文=杉江松恋 写真=首藤幹夫 闇の仕事師たちが化け物譚を武器に世間の悪人と渡り合う。京極夏彦の人気シリーズ、11年ぶりの単行本刊行となる第6弾『遠巷説百物語』はなんと『遠野物語』の世界が舞台だ。〈民話の里〉を京極夏彦はどう描いたのか。 最新刊『遠巷説百物語』刊行記念 京極夏彦インタビュー 「昔話」を「世間話」に戻してゆく ――11年ぶりの新刊となる〈巷説百物語〉シリーズ、第6作は東北地方の遠野が意外にも話の舞台となりました。京極さんには柳田國男の名作を現代に蘇らせた『遠野物語remix』『遠野物語拾遺retold』というご著作もあります。今回の『遠巷説百物語』にはその『遠野物語』を読んでいると楽しい箇所も多々ありますね。 京極:けっこうリンクさせてますね。遠野は民話の里として知られていますが、『遠野物語』は昔話や伝説、世間話など雑多な話が無造作に載っていて、いわゆる民話じゃないんです