あるひと組のカップルが南海の無人島に降り立った。 彼らの目的とする『楽園作り』――各国のメディアが面白おかしくそれを報じ、その成りゆきを見守った。 だが世間がコメディだと思っていた物語は、やがてホラーとなり、ミステリーにもなった。 春も秋もなく、ただあるのは永遠の夏。手造りの楽園――そこで何があったのか。 ここは永遠のロックランド 1929年、夏。 力強い経済成長を続けていたアメリカは、のちに「狂騒の20年代」と呼ばれる時代の終焉に差しかかろうとしていた。 永遠に続くかに見える成長の途上にあって、現代的であること、そして合理的であることが是とされ、旧来の価値観は否定された。一方のソ連ではトロツキーが国外追放され、スターリンがその権力を盤石にしている。 ちょうどダウ工業平均が大暴落直前の史上最高値をつけたその年の夏、ある一組の男女が『世界の果て』と評されていた群島に上陸した。 男の名はフリー