俺がラッパーになろうと思ったのは1994年のことだ。ニューヨーク北部の刑務所の独房で、釈放されたら自分のキャリアとしてラップの腕試しをしようと決めた。 自分が最高のラッパーだと思ったからじゃない。何の資格も求められずに生計を立ることができるのはこれ以外ないと思ったからだ。学歴も必要ない。身元調査を受ける必要もなく、犯罪歴を問われることもない。仕事に応募するには犯罪歴はあまりプラスにならない。それで俺は「よし、やるか」と決めたんだ。最初の数曲を作っている時点で、俺が書くものはどれも自分の人生の中で醜く苦い現実に直面したときのことだと気がついた。俺の人生なんだから、俺がどう語ってもいいはずなんだが、どうもそれほど素晴らしくない何かを、まるで輝かしいもののように歌っている気がした。同じく受刑者だった親しい友人と話していて、ヤツが「若いヤツらに向けて何か有益で、しかも楽しめるようなことをラップに