ユダヤ教の聖典である「タナハ」、キリスト教で言うところの旧約聖書(以下、本項では「旧約聖書」と呼ぶ)の原著の大部分はヘブライ語で書かれ、一部「ダニエル書」、「エズラ記」、および「エレミヤ書」はアラム語で記述された。 「歴史」の項でも述べることになるが、旧約聖書は紀元前3〜1世紀にギリシャ語に翻訳された。これは七十人訳聖書と呼ばれ、キリスト教世界では長らくこのギリシャ語テキストを旧約聖書の底本とみなしていた。しかしユダヤ教ではユダヤ戦争後に確立していったヘブライ語のマソラ本文を底本とした。この2者には取り扱っている文書に差異があり、本文も多少違っている。 5世紀になるとヒエロニムスが新旧約聖書のラテン語翻訳を行ったが、旧約聖書については七十人訳を基本としながらそれを遡るヘブライ語聖書を参照したと言われている。この翻訳は新約とともにラテン語標準訳ウルガタと呼ばれて長く西方教会で権威を持ち、他言