日本の相続税は遺産が1億円を超えれば40%、6億円を超えれば最高税率55%が課される。「世界一高い」ともいわれる税率を前に、多額の生前贈与や不動産投資など節税に励む資産家も多い。が、税務署が目を光らせているのは富裕層だけではない。「あなた」のことも見ているのだ。 5年前の夏のある日、都内に住む会社員、田中聡子さん(仮名・40代)の携帯電話が鳴った。出てみると「〇×税務署ですが、伺いたいことがある」と言う。 不動産会社を経営していた田中さんの父親は、莫大な借金を残して他界。田中さんは父親が所有する不動産を何とか処分するなどして借金を返済した。残った財産は4170万円。母親と田中さん2人の基礎控除を考慮すれば課税ラインの4200万円より30万円少なく、相続税の申告をしなかった。 「税務署から電話がかかってきたのは父が亡くなって2年以上過ぎてからだった。調査官が2人、家にやってきて、父が兄弟を受
