犯罪や非行の背景には性格の病的な異常が大きな役割を占めているという趣旨の主張はかなり古く,一七世紀の中頃から存在した。一九世紀の初期には「背徳狂」という概念が構成され,この種の異常者を狂人の一種とみなす考え方が支配的になった。この背徳狂という概念を明確に記載したのは英国の精神医プリチャードである。彼は一八三五年,その著「狂人論」の中で,感情,気分,性向,習慣,道徳的努力および衝動の病的な抑制欠如を特徴とする一群の精神障害をあげ,これを「背徳狂」とよんだ。その後一三〇年の間,幾多の精神医学者や心理学者がこの「対人関係を結ぶ上に著しい困難を示す変り者」たちについて,各種の面から研究を進めて来た。(略)以上述べたとおり,常習性犯罪人のうちには特に多くの精神病質者がみられる。このことは,彼らの再犯への危険性がきわめて高く,したがって刑事政策の上で,彼らの本質を十分理解した対策が立てられなくてはなら