管啓次郎 Keijiro Suga BAD言語の誇りと苦悩-エボニックス広告、背中読み 本稿は「広告」1999年3+4号に掲載された文章の別ヴァージョン(約2倍の 長さ)です。アトランタのアフリカ系アメリカ人の専門職の人々の団体による、エボ ニックスをめぐる意見広告の解説エセー。対象となった広告には、マルコムXを思わ せる黒人の男の後ろ姿に、I has a dream. というコピーがかぶせられていました。 さてと、この広告。おや、なんか変だな、とは誰でも思うだろう。ええっと、I と きたら、やっぱりhaveでしょう? あるいは過去形だとしたってhad だし。これ、ま ちがってるんじゃないの。しかしこんなシベリアに椰子の木を植えるような大誤植が 堂々とまかりとおるはずはない、よね? 幸か不幸か日本でも中等教育の第一年めに 習得させられる英文法の知識があれば、このセンテンスには違和感を覚える