西欧の傲慢さ撃つ屈折 蓮實重彦氏が見たゴダールの新作(1/2ページ)2010年12月17日16時29分 「ゴダール・ソシアリスム」 蓮實重彦さん さる12月3日に80歳の誕生日を迎えたジャン=リュック・ゴダールの6年ぶりの新作「ゴダール・ソシアリスム」(2010年)が、長編第1作「勝手にしやがれ」(59年)の公開から半世紀後のいま、日本で封切られる。合衆国はいうまでもなく、ヨーロッパの国々でさえほとんど一般公開されるあてのない作品である。カンヌ国際映画祭では監督不在のまま上映されたいわくつきの作品がごく普通に見られるのだから、ゴダールと日本との浅からぬ因縁をまずは祝福したい。カンヌの事務局に欠席の通知を書き送った彼自身の書簡には小津安二郎監督の肖像写真が同封されていたというが、本年度のアカデミー賞名誉賞の授賞式にも出向かなかった彼は、いったい誰の肖像写真をそえて詫(わ)び状を送ったのだろう