山下家の屋敷を囲う柵を破壊し手勢を突き入れた我らが若き主人公 矢三郎は間髪入れずに2人の守衛を切り倒し、鎌倉武士の戦に於(お)いて、ある種テンプレートである命令を下した。 「…我が郎党ども、皆殺しだ!女は犯せ!宝は奪え!館だけは燃やすな!」 「「「おおおおおおお!」」」 ヒラの鎌倉武士とは金と快楽と殺しと名誉の為に戦をやっているような連中である。棟梁の領地拡大の野望を押し付けるセリフで鼓舞するよりも、目先の快楽を得る為の狼藉を許可するセリフの方が彼らの力はぐんぐんと湧いてくるのだ。 1日の3分の2を鍛錬と狩猟と人殺しに費やす矢三郎とその郎党は酒の入っていた庭の守衛をあっさりと討ち果たした。 郎党の一人が死体から甲冑を剥ぎ取りながら矢三郎に笑いかけて言った。 「お頭のご慧眼、見事で御座る!守衛どももこの日は油断しておった様子」 「はははっ、呑みたがりの山下がこのような日に郎党に酒を呑ませぬは