筆者は、メキシコやソ連といった「政党独裁体制」の研究者である。日本ではあまり知られていない、はっきり言ってマイナーな学問である。単なる面白半分、興味本位で研究を続けてきた。つい最近まで、日本の政治と筆者の研究には何の関係もないものだと思っていた。 しかし、近ごろの日本のニュースを眺めていると、日本の政治と政党独裁体制の政治が、重なって見えることが多くなってきた。最近の出来事だと、厚生労働省の収集する「毎月勤労統計」という統計にまつわる問題は、その最たるものである。報じられたところによれば、厚生労働省は、賃金、労働時間や雇用の変動に関する「毎月勤労統計」の収集にあたって、本来ならば500人以上の事業所全てを調査すべきところ(全数調査)、2004年から勝手に一部のみを調査(抽出調査)していた。その上、不正が始まった2004年から2011年にかけての資料を破棄したため、「毎月勤労統計」を基に算出