しばらく前、この映画を見た。 優雅な宮廷生活にふさわしくクラシックの流れる場面が多いが、マリー・アントワネットが調子こき出すと、とたんにニュー・ウェイヴなロックが鳴り始める。ケーキを食いまくる時にはバウ・ワウ・ワウ〈アイ・ウォント・キャンディ〉、仮面舞踏会ではスージー&ザ・バンシーズ〈香港庭園〉といったぐあい。宮廷におけるマリー・アントワネットの異端児ぶりを、ニュー・ウェイヴに象徴させている。 そのように、クラシック(守旧派)VSニュー・ウェイヴ(新参者)の図式で進む映画は、終盤で一転する。音楽が消え、聞こえてくるのは、宮殿のすぐ外に集まった群衆の怒号、浪費を繰り返した王妃への罵声だ。 作中では、王妃の肖像に批判の言葉が殴り書きされた光景が映るが、これは〈ゴッド・セイヴ・ザ・クイーン〉のジャケットを思い出させる。パンクの代表、セックス・ピストルズが王制に唾を吐いた同曲に関しては、目と口を文