税制と社会保障の一体改革に向け、菅直人首相が民主党の政権公約(マニフェスト)で掲げた「全額税方式」による年金制度にこだわらない考えを表明した。 自民党などは税と保険料による「社会保険方式」の維持を主張している。与野党の社会保障議論はこの根幹部分の考え方の違いをめぐって進まなかった。首相が全額税方式の見直しに言及したのは現実路線への転換であり、ためらわずマニフェストを修正してほしい。 民主党のマニフェストは、納めた保険料に基づく「所得比例年金」と、全員に7万円以上を支給する「最低保障年金」からなる新制度に改めるとの内容である。これでは移行に何十年もかかり、全額税方式に切り替えるには莫大(ばくだい)な財源も要する。 例えば、政府・与党は社会保障財源の不足分に消費税をあてる考えだが、年金だけには使えない。医療や介護、少子化対策の財源としても期待されているからだ。全額税方式なら、税率の上げ幅は現在