←はじめにクリックをお願いします。 堀喜身子婦長は、ソ連に抑留されている夫正次氏の故郷である山口県徳山市に向かいます。 戦前の社会では、いまでもそうした風潮は残っているけれど、いったん嫁に入ったら、夫の家の家族です。 自分の生家に帰ろうとは思わない。 戦前は、それがあたりまえだった。 敷居の中にさえ、入れてくれなかった。 当時、いろいろな噂話があったのです。 引揚者の女性は、穢れているとか、です。 堀喜身子さんは、その意味では看護婦であって引揚げに際して不埒な真似に遭うことはなかった。 けれど世間体がある、何があったかなんてわかりゃあしないと、姑は納得しない。 はるばる徳山まで来て、自尊心をズタズタに引き裂かれ、泊まるところもなく、とほうにくれた堀元婦長は、二人の子供の手をひいて堀家の菩提寺を訪ねます。 ご住職に事情を話すと、わかりましたと言って、一夜の宿と、命に代えてもと持ち帰った23名