「焦げを食べるとがんになる」という知識は、今や常識のように広まっています。 真っ黒なトーストや、バーベキューの網の上で放置されていた肉や野菜は食べるべきではない、というのです。 しかし、これらの情報は完全に正確なわけではありません。 アメリカ国立がん研究所(NCI)の上級研究員であるラシミ・シンハ氏は、焦げとがんの関係性を科学的に解説しています。
2023年現在、世界の人口は80億人を上回り、地球の環境や社会に対するプレッシャーが日増しに高まっています。 しかし、今でこそ増え続ける人類ですが、ニューヨーク市マウントサイナイ医科大学(Icahn School of Medicine at Mount Sinai:ISMMS)のワンジー・フー氏らの国際研究チームは、「約100万年前、人類は絶滅の危機に瀕し、10万年以上もの間、世界の人口はわずか約1300人程度で推移していた可能性がある」と指摘しています。 また、この絶滅危機は、私たち現生人類だけでなく、絶滅したネアンデルタール人やデニソワ人の進化にも影響を与えた可能性があるようです。 一体当時の人類に何があったのでしょうか。 今回の研究の詳細は、2023年8月31日付で科学誌『Science』に公開されています。
動物園のゾウは私たちの来園を心待ちにしているようです。 英ノッティンガム・トレント大学(NTU)、ハーパーアダムス大学(HAU)の研究チームは昨年、コロナのロックダウン中に動物園の霊長類が人が来ないことで元気を失くし、食事量が減って孤独な時間が増えていることを発見していました。 そこで今回は霊長類以外の動物250種以上を対象に、来園者の存在が彼らにどんな影響を与えるかを調査。 その結果、ゾウは来園者が来ることで食事量や仲間とのコミュニケーションが増え、さらに退屈さの証拠である「繰り返し行動」が減少することが分かったのです。 人がいない静かな動物園より、大勢の人で賑わっている動物園の方がゾウもテンションが上がるのかもしれません。 研究の詳細は、2023年3月28日付で科学雑誌『Animals』に掲載されています。
「親のいない子供を養子として育てる」そんなエピソードは「優しく温かい話題」かもしれません。 ところが、その養子が誘拐された子供だったとしたら、印象は逆転して、一気に「恐ろしい話」に変わります。 実は、このような事件が海の動物たちの間でも生じたようです。 西アイスランド自然研究センターに所属するマリー・ムルスチョック氏ら研究チームが、メスのシャチがゴンドウクジラの一種「ヒレナガゴンドウ」の赤ちゃんを育てていたと報告しました。 しかもその赤ちゃんは誘拐された子だった可能性が高いというのです。 研究の詳細は、2023年2月17日付の学術誌『Canadian Journal of Zoology』に掲載されました。
日常的に接する食材の中でも、鶏肉は食中毒リスクが高いことで知られます。 少しでも清潔にしておこうと、調理前の鶏肉を水洗いする人も多いのではないでしょうか? しかしこの行動、実はNGです。 世界中の食品安全当局も、生の鶏肉は洗わないよう呼びかけていますが、いまだに水洗いをする人が後を絶たないという。 オーストラリア食品安全情報評議会(AFSIC)の調査では、同国の約半数の人が鶏肉を丸洗いしているというデータが出ています。 では、なぜ鶏肉は洗うべきでないのでしょう? また、鶏肉を洗うことの危険性について、どのような研究報告がなされているのでしょうか。 No, you shouldn’t wash raw chicken before cooking it. So why do people still do it? https://theconversation.com/no-you-shou
「猫草」という言葉をご存知でしょうか? ネコを飼っている人なら、多くの人が知っていると思います。 ネコを飼っていなくても、野良猫が公園の雑草を食べるところを見たことがあったり、ホームセンターなどで「猫草」が売られているのを見たことがある人もいるかもしれません。 元来、ネコは「完全肉食動物」と呼ばれ、植物は栄養的に必要ないと言われています。 しかし、そんなネコが好んで食べるのが「猫草」なのです。 ネコが猫草を食べる理由はこれまで「毛玉を吐き出すため」とされてきました。 しかし近年の研究では猫草に多くの役割があることが明らかになっています。 今回は肉食のネコが好んで食べる「猫草」とその役割についてご紹介していきます。 Researchers Think They Know Why Cats Eat Grass https://www.smithsonianmag.com/smart-news/
南米ペルーの標高2430メートルの山頂に浮かぶ、天空の遺跡「マチュ・ピチュ」。 15世紀のインカ帝国時代のもので、世界でもっとも有名な遺跡の一つとして知られます。 しかし、この「マチュ・ピチュ(Machu Picchu)」という名前について、誤りである可能性を指摘する研究が発表されています。 本当の名前は、単に「ピチュ(Picchu)」あるいは、「ワイナ・ピチュ(Huayna Picchu)」と呼ぶべきだと研究者は指摘します。 しかし、考古学研究を含めあらゆる場所で、この遺跡は「マチュ・ピチュ」として定着しています。 いったい何が問題なのでしょうか? その秘密を以下で詳しく見ていきましょう。 本研究は、2021年8月13日付で学術誌『Ñawpa Pacha』に掲載されたものです。
海上風力発電機の根元は人工の漁礁になっている水中から見上げると風力発電機の基礎は巨大な柱のようにみえる / Credit:Dominion Enegyアメリカ東海岸のバージニアビーチから40kmほど離れた場所には現在、2基の海上風力発電機が建設されています。 風力発電機は巨大であり、水面からの高さは180m以上、水中にあるスチール製の基礎部分も40m近くに及びます。 風力発電機の運用は去年の10月から開始されており、監視用に水上及び水中には監視カメラが設置されました。 ですが監視がはじまってから6カ月後、水中カメラに映る景色は劇的に変化していました。 水中にある風力発電機の基礎部分は一面が藻で覆われ、ムール貝などの貝も張り付いており、周囲にはシイラ・シーバスなど多くの魚のたまり場にもなっていました。 このような豊かな生態系が築かれた要因は、風力発電機の基礎部分の構造にありました。 水中の基
1492年のアメリカ大陸の発見は、言わずもがな、クリストファー・コロンブス(1451頃-1506)の功績の一つとして記録されています。 人類による北米大陸への入植は2〜3万年前にすでに行われていたのですが、当時の西欧人は「新大陸を発見した!」と大いにわき返りました。 しかし、それもすべて「ぬか喜び」だったかもしれません。 ミラノ大学(University of Milan・伊)の最新研究により、ミラノの修道士が1345年頃に書いた古文書に北米の大西洋岸に関する記述が発見されたのです。 これは当時のイタリア人が、コロンブスより約150年も前にアメリカ大陸の存在を知っていたことを示唆します。 同じイタリア出身のコロンブスは、この事実を知らなかったのでしょうか? 研究は、学術誌『Terrae Incognitae』に掲載されています。 Mysterious Text Suggests Europ
マウスの20匹中19匹で腫瘍が完全に消滅したマウスの20匹中19匹で腫瘍が完全に消滅した / Credit:Canva . ナゾロジー編集部mRNAとは細胞に対して特定のタンパク質を作るように指示する分子です。 新型コロナウイルスのワクチンに含まれるmRNAも、ウイルスの体の一部(スパイク)を作る指令が含まれており、体内に注射されるとウイルスの断片を生産し、免疫の訓練を促します。 そこで今回、BioNTechとファイザーの研究者たちはmRNAの持つ命令能力を、がん治療に転用する方法を開発しました。 mRNAに、がんとの闘いを有利にするタンパク質の生産命令を乗せることができれば、治療に大きく役立つと考えたからです。 研究者たちは様々なタンパク質の生産命令を込めたmRNAを、がんになったマウスに注射し、効果が現れるかを確かめていきました。 結果、サイトカインの一種である4つのタンパク質(インタ
コロナ禍において人類は、2種類のウイルスと戦っていました。 最近、World Organizationの研究者たちにより『Pathogens』に掲載された論文によれば、新型コロナウイルスによる長引く後遺症が「EBウイルス」と呼ばれる、既に体内にある別のウイルスの再活性化によって引き起こされていることが示されました。 新型コロナウイルスに感染すると、体内で潜伏状態にあったEBウイルスが目を覚まし、「脳の霧」に代表される、長期的な後遺症を発症させていたようです。 つまり人類が戦っていたのは、新型コロナウイルスとEBウイルスの両方だった可能性が高いのです。 人類の体内に潜むEBウイルスとはどんなウイルスなのか? そしてEBウイルスが新型コロナウイルスによって目覚めるのは、なぜなのでしょうか?
ネコは時々、エサが残っているのに、ボウルの底が見えると食事をやめることがあります。 また、ネコによってはボウルを傾けてエサをこぼし、床の上から食べるものもいます。 必ずというわけではありませんが、これは世界中のネコに広く見られる行動で、その理由はまだ解明されていません。 しかし現在、最も有力なのは「ヒゲ疲れ(whisker fatigue)」という説です。 Why Do Cats Stop Eating When The Bottom Of The Bowl Is Visible, But There’s Still Food? https://www.scienceabc.com/nature/animals/why-do-cats-stop-eating-when-the-bottom-of-the-bowl-is-visible-but-theres-still-food.html
コーヒーは世界で最も広く消費されている飲料の1つであり、カフェインによって注意力や睡眠に短期的な影響を与えます。 しかし、人間の脳に対する長期的な影響を示す研究は不足しています。 そのためポルトガル・ミーニョ大学医学部に所属するヌノ・ソウザ氏ら研究チームは、コーヒーが脳機能に与える影響を調査しました。 その結果、コーヒーを常飲する人は、飲まない人とは異なった脳内ネットワークをもっていたと判明。 研究の結果は、4月20日付けの学術誌『Molecular Psychiatry』に掲載されました。 Habitual Coffee Drinkers Show Different Brain Connectivity Patterns and Higher Stress Levels https://www.technologynetworks.com/neuroscience/news/habit
人間の脳は大きく、知性に溢れています。では、もっと大きな脳は更なる知性を生み出すのでしょうか? 南アフリカ・ウィットウォーターズランド大学解剖学部に所属するPaul Manger氏ら研究チームは、クジラとイルカの脳が特別製だったと発表しました。 クジラとイルカの脳が大きいのは、知能のためではなく熱生成のためだと判明したのです。 研究の詳細は、3月9日付の科学誌『Scientific Reports』に掲載されました。 Whale and dolphin brains are special—for heat production, not for intelligence https://phys.org/news/2021-03-whale-dolphin-brains-specialfor-production.html
「QWERTY配列」のキーボードが誕生するまでQWERTY配列のキーボードが生まれるきっかけになった場所は、1866年のアメリカ・ミルウォーキーにあった小さな作業場です。 そこで、クリストファー・レイサム・ショールズという新聞編集者が一獲千金をねらって、ある発明をしていました。 本のページ番号を自動でふってくれる機械です。 C.L.ショールズ / Credit: ja.wikipedia しかし、1867年7月、ショールズはある雑誌で「タイプライティング・マシン」という短い記事に衝撃を受け、大きく方向転換します。 最終的に作ったのは「ペンで書くより2倍速く、考えたことを文字にする機械」、すなわちタイプライターでした。 ただ、この機械をタイプライターと認識するのは困難です。 白鍵と黒鍵にローマ字がふってあって、パッと見はピアノにしか見えません。紙詰まりが起きやすく、印字の行もズレがちでした。
日本のミミズは落ち葉の絨毯を壊滅させる黒い落ち葉の層が分解され、2カ月後には全て茶色い土になってしまった / Credit:ニック・ヘンシュエミミズが豊かな土地を作ると言われているのは、彼らの食べ物が原因です。 ミミズは落葉樹や枯草が落とす葉を体内で消化して糞として土に排出することで、窒素やリンといった豊かな栄養素を土に供給します。 そのため、日本の豊かな森林土壌の維持にとって、ミミズは大切な存在になっています。 しかし、アメリカの落葉樹林では落ち葉の絨毯は、水の過剰な蒸発を防いだり病原菌を遮断するといった、皮膚のような働きをしていました。 また落ち葉の絨毯は、落葉樹自身の種が発芽するにあたって、湿度の維持をはじめ非常に重要です。 にもかかわらず、日本のミミズは葉を食べる速度が非常に早く、アメリカの落ち葉の絨毯を、あっという間に食べつくしてしまうのです。 落ち葉の皮膚の喪失は、土壌の乾燥や
オランダの新興企業・ループ社により、地中に生育する菌糸体を使った棺「リビング・コクーン(英: Living Cocoon)」が発表されました。 この棺は、遺体の分解プロセスを早め、土壌の有害物質を取り除き、新しい植物の成長を助けるはたらきをします。 木や金属を使った従来の棺桶では、遺体が分解するまでに10年以上かかりますが、リビング・コクーンでは2〜3年で完全に分解するとのこと。 開発者のボブ・ヘンドリクス氏は「現代の装飾的な埋葬が忘れてしまった、”人を自然に帰す”という基本に立ち帰る目的のもとに開発を進めました」と話します。
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