『テロ』(フェルディナント・フォン・シーラッハ:著、酒寄進一:訳/東京創元社) 良心と法―。人間が社会生活を営むときに、尊重されるべき二つの概念は互いが互いを支え合っていると信じられている。良心があるから法は守られ、法は良心を守っていると多くの人々は疑っていないだろう。しかし、仮に片方を守ることがもう片方を切り捨てることになるのだとしたら? そして、そんな状況が来るはずはないと断言できるだろうか? 世界的ベストセラー『犯罪』でその名を轟かせたフェルディナント・フォン・シーラッハ初の戯曲、『テロ』は世界中で物議を醸している問題作だ。「ある事件」を審議する法廷を通して、読者は良心と法を天秤にかけることを強いられる。誰もがページをめくりながら、答えなき問いと格闘することだろう。 物語は裁判の開廷から始まる。あるドイツ空軍少佐を裁くための裁判だ。彼の罪状は次の通りである。 ドイツ上空で旅客機がテロ
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