南シナ海の南沙諸島(スプラトリー諸島)をめぐる情勢の緊迫度が高まっている。中国が滑走路の建設などのために大規模な埋め立てを続けていることに米国が猛反発。中国と東南アジア各国との間のローカル・イシューだった南沙諸島問題が、一気にグローバル・イシューに性質が変わってしまった。 南沙諸島を含めた南シナ海にある島嶼の領有権問題は、一般にメディアで書かれるように「1970年代に海底資源が見つかって以来、対立が深まった」という時間軸と図式で考えようとすると、その理解は局限的になってしまう。米中や東南アジア諸国が戦わせている「言語」を深く読み解くためには「中国近代と南シナ海」の経緯を知っておく意味は小さくない。
池内恵(いけうちさとし) 東京大学先端科学技術研究センター グローバルセキュリティ・宗教分野教授。1973年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻博士課程単位取得退学。日本貿易振興機構アジア経済研究所研究員、国際日本文化研究センター准教授を経て、2008年10月より東京大学先端科学技術研究センター准教授、2018年10月より現職。著書に『現代アラブの社会思想』(講談社現代新書、2002年大佛次郎論壇賞)、『イスラーム世界の論じ方』(中央公論新社、2009年サントリー学芸賞)、『イスラーム国の衝撃』(文春新書)、『【中東大混迷を解く】 サイクス=ピコ協定 百年の呪縛』 (新潮選書)、 本誌連載をまとめた『中東 危機の震源を読む』(同)などがある。個人ブログ「中東・イスラーム学の風姿花伝」(http://ikeuchisatoshi.com/)。
香港の命である国際金融のハブ機能が集中する中環(セントラル)地区を占拠し、経済活動の根幹をマヒさせることで中央政府に打撃を与えようという「占中」運動は、民主派が呼び掛けていた10月1日の国慶節をまたずに決行された。今回の前倒し決行は事前に定められていたことなのか。それとも学生らの盛りあがりの過程で突発的に起きてしまったことなのか。後者だとするなら、一時的なガス抜きで終わる可能性も否定できない。 “金の卵を産み続ける鶏” 学生らは香港特別行政区政府トップである梁振英行政長官(以下、長官)との直接対話を求めているが、香港問題の最終決定権を握っているのは北京の共産党中央政府である。であればこそ、アメリカ政府や台湾の馬英九総統が示した今回の運動への強い支持を背景に長官との対話を実現させたところで、学生らが求めるような「民主化」の方向が打ち出されることはないはずだ。これが、1国2制度の下で特別行政区
このところ、政府に対する抗議の焼身自殺が相次いでいる。立て続けに6人が焼身自殺を図り、4人が死亡した。 中国の支配に命を犠牲にして抗議しているチベットの人たちの話ではない。欧州連合(EU)の一角、ブルガリアで起きている悲劇だ。 ブルガリアは2007年、繁栄への希望を胸にEUに加盟した。だがその後も「欧州最貧国」の地位から脱却できず、国民の疲弊は限界に達している。そこに電気料金の大幅な値上げが追い打ちを掛け、2月の厳しい寒さの中、幾万もの民衆は各地で激しい抗議デモを繰り広げた。中道右派「欧州発展のためのブルガリア市民」(GERB)を与党とするボリソフ首相はジャンコフ財務相を解任して乗り切ろうとしたが、民衆の怒りは収まらず、同月、内閣はついに総辞職。5月12日に繰り上げ総選挙が実施されることになった。
自国とは異なる国で起きた犯罪をあえて訴追する「普遍的管轄権」を、以前フォーサイトで紹介したことがある(2013年10月21日「国家に縛られず犯罪を裁く『普遍的管轄権』とは――マドリードを訪ねて」)。 通常の裁判管轄権は国境に縛られるが、国際秩序を揺るがす恐れのあるジェノサイド(大虐殺)や「人道に対する罪」の場合、独裁者や国家機関が罪を免れないためにも、当事国以外の国が罪を問える、との考え方である。1990年代後半から2000年代にかけてスペインの予審判事バルタサル・ガルソン氏がこの制度を利用し、チリの独裁者ピノチェト元大統領やアルゼンチンの独裁政権幹部を次々と訴追して、大きな反響を呼んだ。
権威主義的な中国とロシアは、独裁体質、反体制派抑圧、上意下達など非民主的政治構造で一致するが、両国を比較すると、「中国の方がロシアより民主的で、政策決定プロセスは中国がはるかにすぐれている」とする分析をブルガリアの政治学者が最近まとめた。首都ソフィアにあるリベラル戦略センターのイワン・クラスチェフ所長の興味深い英文の論説は、以下のサイトで読める。 http://opendemocracy.net/author/ivan-krastev ロシアはソ連崩壊後、民主憲法を採択。欧米並みの複数政党制、民主選挙の原則をうたっているが、同所長は「中国は社会主義を偽造し、ロシアは民主主義を偽造している。中国は個人支配と恒久政権を防ぐシステムが機能している」とし、プーチン大統領の個人独裁がロシア政治を退化させているとの認識を示した。中国の経済、社会が、ロシアより活性化しているのは、中国の「擬似社会主義」に
台湾に龍應台(ロン・インタイ)という名前の女性作家がいることを知ったのは20年ほど前だった。筆者は台湾の大学に留学していたのだが、同じ年代の台湾人学生たちが競って彼女の作品を手に取り、論じ合っていたからだ。 1985年、30代で無名だった彼女が著した「野火集」というコラム集は、国民党の独裁体制の欠陥を鋭く射抜き、同書は題名のごとく台湾社会を焼き尽くしながら大ベストセラーとなった。彼女は当時の台湾社会において、紛れもなくひとつのイコン(偶像)だった。 以来20年以上にわたり、龍應台は台湾、香港、そして中国大陸の中華文化圏で最も影響力のある作家の1人として活躍してきた。2006年、中国共産主義青年団(共青団)の機関紙「中国青年報」の付属紙「氷点週刊」が、歴史認識をめぐり停刊処分を受けた事件では、中国の胡錦濤国家主席にあてた公開書簡「文明で私を説得して欲しい」で話題を呼んだ。その龍應台が2009
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