「二度と行けないあの店で」(都築響一編)を読んでいる。 この本に収録されている、矢野優による「羽田の運河に浮かぶ船上タイ料理屋」を読んで、あれ、この文章に出てくるA君ってMidasさんのことじゃない?と思った。 詳細は書かない。どうしてA君がMidasさんかもって思ったかも書かない。 けど、読んでいて胸が苦しくなった。と言うか胸が痛んだ。失ったものが大きすぎることを思い出して。 「A君はやっかいな男だった。自分が関心を持った人間には友好的だが、そうでなかったら(ほとんどの場合はそうだ)露骨に見下す」 人生のあるひととき、わたしはMidasさんと毎日のように電話で話をしていた。 その頃のわたしは引きこもりの無職で、収入も貯金もなく、親から頼まれたおつかいのお釣りをちょろまかしてビールを買い、昼間からそれを飲んで親を激怒させるなどしていた。第三のビールとか発泡酒じゃなくて、一番搾りを飲んでいた