圏論の教科書として、一つの定番と呼ばれる本がMacLaneのCategories for the Working Mathematician(邦訳:圏論の基礎)だ。この本は自分自身にとっても大学に入ってから最初に読みふけり、読み切った本としてとても親しみ深い本である。しかし、先日久しぶりに手に取って眺めなおしてみると、少し物足りないと感じるところや良くないと感じるところも多くある。そこで「圏論の基礎(以下CWM)」について今の立場から思う所をレビューしてみようと思う。 ●MacLaneのスタイル まず、CWMに限らずMacLaneの書く本(例えばHomology)は特徴がある。それは「具体から抽象へ」という流れを明確に意識している点だ。例えば、随伴関手の説明をするとする。すると、一般的な話をする前に自由ベクトル空間と忘却関手の話をする。自由グラフの話をする。それらの構造を意識しながら、共通