東日本大震災の混乱の最中、菅直人首相は自民党の谷垣禎一総裁に副総理兼震災復興担当相として入閣を求めた。安定政権樹立を目指した電撃作戦だったが、谷垣氏はあっさり拒否し、「大連立」への野望はあえなくついえた。首相の「処方箋なき暴走」により与野党の「挙国態勢」の動きは止まってしまったのか-。(水内茂幸、峯匡孝、文中敬称略) 大震災から8日経た19日午後、自民党本部4階の総裁室にいた谷垣の元に、党の代表番号にかかった一本の電話が回された。 「2人だけでお会いすることはできませんか…」 声の主は菅だった。電話口にも緊迫感がヒシヒシと伝わった。 「菅さんは本気で大連立に動くつもりなのだろうか?」 そんな疑念が谷垣の脳裏をよぎったが、返すべき言葉はすでに決まっていた-。 ここで時計の針を少し巻き戻そう。 この直前まで菅は、前首相の鳩山由紀夫、元代表の小沢一郎、前外相の前原誠司ら党代表経験者を首相官邸に招