それは、あらゆる面で無謀なレースだった。 政府の支援を受けずに3人乗りのロケットを製造し、宇宙の入口へ2週間以内に2回到達した最初のチームに、1000万ドルの賞金が与えられる Xプライズと名付けられたこの国際賞金レースが発表された1996年時点では、政府の関わっていないロケットなど影も形も存在していなかった。宇宙船どころか「音速以上の有人航空機」を民間企業が製造した例すらなかった。高度100km以上と定義された宇宙の入口へ到達するためには音速の何倍もの速度が必要となるという一点だけを見ても、その難しさがうかがい知れる。大気圏への安全かつ効率的な再突入方法などの技術面だけでなく、ロケット打ち上げのために取得すべき許認可が数多くあり、乗り越えるべきハードル、考慮しなければならない事項は山積みである。 特筆すべきは難易度の高さだけではない。懸けられた1000万ドル(約11億円)という賞金もまた規
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