ドナウ川の流れる街、ハンガリー・ブダペストで、私は音楽の勉強を続けている。 ハンガリーとの出会いはかれこれ24年前。高校時代に所属していた吹奏楽部で、ハンガリーへ演奏旅行に訪れたことが契機だった。デブレツェン、ケチケメート、そしてブダペスト。ハンガリー人のおおらかな人柄に惹かれると同時に、いつかここで音楽を勉強したいと夢を描く自分がいた。 高校卒業時、幼馴染みで高校も一緒に楽器を演奏していた仲間のひとり、深堀美穂さんが18歳という若さで白血病で他界してしまう。その白血病と闘っていた彼女から、生前、1通の手紙をもらった。「私には夢があるの。何年かかってもいいから大学に進学する。そして学校の先生になるの」。その手紙の中身は、夢にあふれていた。私は彼女の遺志を継ぎ、教育学部のある大学へ進学し、地元千葉県で10年間の教員生活を送った。元気でやんちゃな高校生との生活は、とても魅力的かつスリリングだっ