と、いうわけで、いよいよ一連のエントリの最後として、『「ボヴァリー夫人」論』の最後の部分を読んでいきたいと思う。 「Ⅸ 言葉と数字」および「Ⅹ 運動と物質」の二つの章で展開されるのは、いずれも、主題論的な分析である。……なるほど、これは、『ボヴァリー夫人』のテクストを綿密に読み込んだ上での、説得力のある読解ではある。とりわけ、「Ⅹ 運動と物質」においては、作中に現れるイメージの推移を分析した上で、視覚的というよりもむしろ触覚的な感性を備え、その感性を自身の周囲へと浸透・拡散させ、最終的には大気の中に気化していく……という、画期的なシャルルの姿が描き出されている。 だが、このような主題論的な分析は、これまで蓮實が多くの著作でなしてきたものと、何が違うのだろうか。……逆から言えば、最終的に到達するのがこのような地点であるのならば、果たして、「Ⅷ 虚構と表象」に至るまでの、詳細を極める原理的な
ゆうべの常岡浩介さんの「イスラム国」潜入ルポは、緊急特集だった。 金曜夜中に常岡さんが帰国して、そこから編集作業開始。私は別の取材で韓国にいたので放送日のきのうだけかかわった。 実は、きのうは山形で父親の3回忌をやっていたのだが、喪主なのに法事はパスした。 取材のはじまりは、8月下旬、イスラム法学者、中田考(なかた・こう)さんにイスラム国の幹部から来たこんなメールだった。 【ジャーナリストは無事で健康です。生きています。早く通訳をしてほしい。】 ジャーナリストとは、拘束されている日本人、湯川遥菜(はるな)さんのことで、言葉が通じないので尋問できないから通訳に来てくれと中田さんに依頼してきたというわけだ。 湯川さんの生存はほぼ確実だ。拘束以来初めての情報らしい情報である。 中田さんは、カイロ大学で博士課程を終え、同志社大学の教授を去年までつとめていた研究者。 イスラム名はハサンで、ツイッター
「安らかに眠ってください 過ちは繰り返しませぬから」という原爆死没者慰霊碑の碑文は、被害者である日本が「過ち」を犯したかのような文言となっており、改めるべきではないか。 (回答) 原子爆弾は、街を一瞬のうちに壊滅させ、罪もない子どもから老人まで多くの尊い命を奪いました。かろうじて生き残った人も、心と体に大きな痛手を受け、多くの被爆者が今なお苦しんでいます。わずか一発の原子爆弾が引き起こした、この悲惨な出来事を体験した広島市並びに広島市民は「核兵器は人類滅亡を引き起こす"絶対悪"である」という人類にとって最も重要な真実を直観し、「二度とヒロシマを繰り返してはならない」と決意しました。そして、原爆犠牲者の冥福を祈るとともに、戦争や核兵器の使用という過ちを繰り返さず人類の明るい未来を切り拓いていくことを誓う言葉として、広島平和都市記念碑(原爆死没者慰霊碑)に「安らかに眠って下さい 過ちは繰返しま
うちわ、それとも、資料――? 7日の参院予算委員会で、民主党の蓮舫氏が、松島みどり法相が似顔絵や政策が書かれたうちわを選挙区内のお祭りで配っていたことを取り上げ、「寄付にあたり違法だ」と訴えた。松島氏は「うちわのような形をしているが、討議資料だ」と反論した。 【写真】参院予算委で民主党・蓮舫氏の質問に答える松島みどり法相=7日午前9時59分、国会内、越田省吾撮影 蓮舫氏は委員会で、松島氏が夏に配ったうちわを手に「しっかりとした柄(え)。それにつながる骨組みがある。うちわなら、価値のある有価物で、その配布は寄付となり違法だ」とただした。公職選挙法では、政治家が選挙区内の有権者に寄付することを禁じている。 これに対し、松島氏は「議員の活動報告を印刷した配布物だ。うちわと解釈されるならば、うちわとしての使い方もできる」などとし、公選法の寄付には当たらないと主張した。 法相が関わる「うちわ論
古新聞をめくっていたら、盧溝橋事件直後の『婦人公論』誌の広告にこんなのがあった。 東京朝日新聞 昭和12年7月16日付 「貞操と犯罪」号と銘打たれたこの号には「同性愛心中の秘密」「春の目覚めと少年の犯罪」「貞操危険信号」(なかなか秀逸な小見出し)が並ぶ。当時の婦人雑誌はこんなもんなのであまり驚かないが、数々のエロ記事のなかでひときわ目を引くのが、安田徳太郎博士による「現代大学生の童貞調査」である。 これはすでに澁谷知美さんの研究などで取上げられているのかもしれないが、残念ながら私は未見。とりあえず、煽り文句がすごい。 男子を正しく理解することは結婚期の娘にとつても、結婚生活にある妻にとつても、子女をもつ母親にとつても實に大切なことである。この為に私は日本の青年の童貞観念及び童貞破棄の姿を客観的に科学的に一一六七人の青年、大学生を動員して七年間に亙つて苦心惨憺して調査した…… 博士もたいへん
ぼくは1980年代の終わり頃に共産主義者になったので、すでにそのころにはスターリンやソ連に対する憧れというものはほとんどなかった。*1 スターリンとは「共産主義の大義を貶めた極悪人」であるから、ほとんど近づきもしなかったのだ。 この点は毛沢東とは違った事情がある。 藤子不二雄Aが『毛沢東伝』を描いて毛沢東を「英雄」として扱っていたり、本多勝一がかなりの毛沢東や「文革」を肯定的に描いていたり、『銀河英雄伝説』登場人物(ヤンやハイネセン)の下敷きの一人が毛沢東であったり、コミュニストではない知識人に、毛沢東ファンが多い。 しかし、スターリンファンというのはあまり聞かない。「共産趣味」「ソ連趣味」として「スターリン好き」という人々を最近になってネットで見るようになったが、まあアレだ。「愛国戦隊大日本」を一生懸命つくってしまうメンタリティと同じであろう。 したがって、コミュニストになってから読んだ
吉田証言 根拠にせず/河野談話 菅官房長官認める 菅義偉官房長官は3日の衆院予算委員会で、「慰安婦」問題で日本軍の関与と強制性を認め謝罪を表明した「河野官房長官談話」(1993年)の作成過程に関し、「吉田清治氏の証言は客観的事実と照らしてつじつまが合わなかった。他の証言者の証言と比較して信用性が低かったことから『河野談話』に反映されなかった」と述べ、「河野談話」が「吉田証言」なるものをまったく根拠にしていないことを認めました。民主党の辻元清美議員への答弁。 安倍晋三首相も「官房長官が答弁した通りだと思う」と述べました。菅氏は「『河野談話』の作成過程において、政府は吉田氏から聴き取り調査は行ったが、信用性が低かった」とも述べました。 辻元氏は、安倍首相がかつて、「河野談話」の根拠は吉田氏の証言によっていると発言していたことを指摘。これについて首相は、「河野談話」自体は強制連行の事実を認めてい
前回の記事にid:syachiku1氏からトラックバックをいただいた。これに返答していきたい。 今回は返答という記事性格上「ですます調」でお送りします。 まず、次に以下についてです。 >詐欺犯が、「被害者はとてもお人よしで、俺がだまさなかったら、他のやつにだまされていたに違いない。被害者は同じような詐欺にあったであろう事は想像に難くないのだから、俺は悪くない」と言ったら、syachiku1氏は納得するのだろう。 加害行為をしたかもしれない者と、実際に加害行為をした者を同列に論じて、後者を免責するのは、詭弁だ。 解釈がおかしい。その女性の不幸な身の上の根本原因は慰安所の存在ではなく家庭の貧困であると言っているだけだ。ただの仮定の話ではない。 どう解釈がおかしいか分かりませんでした。syachiku1氏の文章は、従軍慰安婦にされた女性は、従軍慰安婦にされずとも、いずれ売られて、売春宿で働いてい
安倍晋三首相は六日午前の衆院予算委員会で、集団的自衛権の行使容認に関連し、行使に必要となる武力行使の新三要件を満たしたとの判断に至った根拠となる情報が、特定秘密保護法に基づく特定秘密に指定され、政府の監視機関に提供されない可能性があるとの考えを示した。 首相は、新三要件を満たすと判断する根拠となる情報について「そのような事実を含めた情勢などの情報を、国会や国民に適切に公開し、理解を得ることは極めて重要だ」と答弁。内閣府に設置する予定の特定秘密の監視機関「独立公文書管理監」に対して「十分な検証に必要な権限を付与することを検討している」と述べた。 一方で、各行政機関が管理監に、こうした情報の提供を拒む可能性に言及した。「提供を拒む場合は、管理監に理由を疎明しなければならないことを運用基準に明記することを検討している。特定秘密の漏えいがないにもかかわらず、管理監に提供されない場合は極めて限られる
歴史的仮名遣の『神社新報』まとめて読んでいたら、わりとうけまくってしまい、つらい。 ( ※特定のイデオロギーの紐帯としての神社信仰には唾棄を覚えるけれども、熊楠のような対峙と同化と臆面もなく錯覚するのとは同義ではない包摂には憧憬を覚えますがね。 ) 神社界唯一の新聞社 神社新報社 たとえばこれ。 「杜に想ふ 秋の夜長=八代司」『神社新報』平成26年09月15日付。 http://www.jinja.co.jp/news/news_007649.html いわく「本欄にも折々に執筆される山谷えり子氏と有村治子氏とがそれぞれ初入閣。その活躍ぶりは早速に表はされ」って記述がありますが、確かにネオナチ団体といちゃこらして「しらんがな」では済まないわけで、まあ、って確かに世界を驚かせるような活躍しとるわな。 さて、「杜に想ふ」にたびたび登場され、戦前日本への回帰を切に願う山谷えり子代議士の信仰がロー
http://www.yomiuri.co.jp/book/review/ 人間と国家――ある政治学徒の回想(上) (岩波新書) 作者: 坂本義和出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2011/07/21メディア: 新書 クリック: 18回この商品を含むブログ (16件) を見る人間と国家――ある政治学徒の回想(下) (岩波新書) 作者: 坂本義和出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2011/07/21メディア: 新書購入: 1人 クリック: 6回この商品を含むブログ (15件) を見る……一九六〇年代の日本。安保反対運動で社会は騒然とし、外交がどこに進むか分からなかった。論壇では、その少し前に坂本義和東大助教授が「中立日本の防衛構想」を『世界』に発表しており、他方『中央公論』では高坂正堯京大助教授が「現実主義者の平和論」で華やかなデビューを飾った。この対照的な両者が軸となり、戦後の外交
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