ブックマーク / morningrain.hatenablog.com (12)

  • ダロン・アセモグル&ジェイムズ・A・ロビンソン『国家はなぜ衰退するのか』  - 西東京日記 IN はてな

    それぞれ数多くの論文を発表し高い評価を得ているアセモグルとロビンソンが「経済成長はどのような条件で起こるのか?」という大テーマについて論じた。読もうと思いつつも今まで手が伸びていなかったのですが、授業でこのと似たようなテーマを扱うことになったので、文庫版を手に入れて読んでみました。 目次は以下の通り。(第1章〜第8章までが上巻、第9章以降が下巻) 第1章 こんなに近いのに、こんなに違う 第2章 役に立たない理論 第3章 繁栄と貧困の形成過程 第4章 小さな相違と決定的な岐路―歴史の重み 第5章 「私は未来を見た。うまくいっている未来を」―収奪的制度のもとでの成長 第6章 乖離 第7章 転換点 第8章 領域外―発展の障壁 第9章 後退する発展 第10章 繁栄の広がり 第11章 好循環 第12章 悪循環 第13章 こんにち国家はなぜ衰退するのか 第14章 旧弊を打破する 第15章 繁栄と貧

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  • 2010年代、社会科学の10冊 - 西東京日記 IN はてな

    2010年代になって自分の読書傾向は、完全に哲学・思想、心理、社会、歴史といった人文科学から政治、経済などの社会科学に移りました。その中でいろいろな面白いに出会うことができたわけですが、基的に社会科学の、特に専門書はあまり知られていないと思います。 人文科学のは紀伊國屋じんぶん大賞など、いろいろと注目される機会はあるのに対して、社会科学のはそういったものがないのを残念に思っていました。もちろん、いいは専門家の間で評価されているわけですが、サントリー学芸賞などのいくつかの賞を除けば、そういった評価が一般の人に知られる機会はあまりないのではないかと思います。 そこで社会科学のの面白さを広めようとして書き始めたこのエントリーですが、最初にいくつか言い訳をします。 まず、「社会科学の」と大きく出たものの、法学や経営学のはほぼ読んでいませんし、以下にあげたを見てもわかるように社会

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  • トマ・ピケティ『資本とイデオロギー』 - 西東京日記 IN はてな

    書を「『21世紀の資』がベストセラーになったピケティが、現代の格差の問題とそれに対する処方箋を示した」という形で理解している人もいるかもしれません。 それは決して間違いではないのですが、書は、そのために人類社会で普遍的に見られる聖職者、貴族、平民の「三層社会」から説き始め、ヨーロッパだけではなく中国やインド、そしてイランやブラジルの歴史もとり上げるという壮大さで、参考文献とかも入れると1000ページを超えるボリュームになっています。 ここまでくるとなかなか通読することは難しいわけですが(自分も通勤時に持ち運べないので自宅のみで読んで3ヶ月近くかかった)、それでも読み通す価値のある1冊です。 書で打ち出された有名な概念に「バラモン左翼」という、左派政党を支持し、そこに影響を与えている高学歴者を指し示すものがあるのですが、なぜそれが「バラモン」なのか? そして、書のタイトルに「イデ

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  • 東浩紀『訂正可能性の哲学』 - 西東京日記 IN はてな

    『ゲンロン0 観光客の哲学』の続編という位置づけで、第1部は『観光客の哲学』で提示された「家族」の問題を、書で打ち出される「訂正可能性」という考えと繋げていく議論をしていきますが、第2部は『一般意志2.0』の続編ともいうべきもので、『一般意思2.0』で打ち出された考えが「訂正」されています。 第1部の議論については個人的には乗れないところもあります。 一番の大きな理由はクリプキが『ウィトゲンシュタインのパラドックス』で出してきたクワス算の例を使っているからです。書の59pの註30でも書かれているように、クリプキの議論はウィトゲンシュタインの解釈としては不適当だと思いますし、たとえウィトゲンシュタイン解釈を別にしたとしても、クリプキの議論にはあまり意味があるとは思えないからです。 確かに根源的な疑問や懐疑論には否定し難いものがあります。例えば、「この世界は歴史やその他諸々含めて今朝つくら

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  • 2022年の本 - 西東京日記 IN はてな

    気がつけば今年もあと僅か。というわけで恒例の今年のです。 今年は小説に関しては、朝早起きしなくちゃならない日が多かったので寝る前に読めず+あんまり当たりを引けずで、ほとんど紹介できないですが、それ以外のに関しては面白いものを読めたと思います。 例年は小説には順位をつけているのですが、今年はつけるほど読まなかったこともあり、小説小説以外も読んだ順で並べています。 ちなみに2022年の新書については別ブログにまとめてあります。 blog.livedoor.jp 小説以外の 筒井淳也『社会学』 「役に立つ/立たない」の次元で考えると、自然科学に比べて社会科学は分が悪いかもしれませんし、社会科学の中でも、さまざまなナッジを駆使する行動経済学や、あるいは政策効果を測ることのできる因果推論に比べると、社会学は「役に立たない」かもしれませんが、「それでも社会学にはどんな意味があるの?」という問題

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  • 首藤若菜『雇用か賃金か 日本の選択』 - 西東京日記 IN はてな

    新型コロナウイルスによるパンデミックは経済活動に大きな影響を与え、多くの人が職を失いました。 書の前半では、まさに需要が喪失したといっていい航空業界をとり上げ、日と欧米の会社で対応がいかに違ったかということから、日の雇用社会の特質を探る議論を行っています。 前半に関しては、モビリティをテーマにしたネットメディアの「Merkmal」で紹介記事を書いたので、そちらを読んでほしいと思います。 merkmal-biz.jp 簡単にまとめると、日の航空会社(ANA)は、コロナによって旅客需要が激減すると、新卒採用を打ち切り、休業・休職制度を活用を呼びかけ、賞与も半年程度から1〜2ヶ月程度に削減し、さらに月例賃金のカットにも踏み切りました。 希望退職者の募集も行いましたが、指名解雇は行わず、あくまでも自主的なものとして進めました。もちろん、出向なども活用されましたし、関連会社では非正規社員を中

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  • マンサー・オルソン『集合行為論』 - 西東京日記 IN はてな

    集団と集合財(公共財)の関係を論じた古典的著作。やはり読んでおくべきかと思って読んでみました。 ただ、O・E・ウィリアムソン『市場と企業組織』を読んだときにも思いましたけど、完全に古典というわけでもない少し古めのを読むと、文脈や著者は想定している論敵の理論といったものがわからずに、内容を掴むのがやや難しいですよね。 というわけで、以下では「なるほど」と思った部分を簡単に紹介します。 目次は以下の通り。 序 章 第1章 集団と組織の理論的考察 第2章 集団規模と集団行動 第3章 労働組合と経済的自由 第4章 国家と階級の伝統理論 第5章 伝統的な圧力団体論 第6章 「副産物」理論と「特殊利益」理論 1971年版の補遺 書が問題としている1つのポイントは、集合財の獲得を目指す集団において、小集団では構成員の共通の利益は達成されやすいが,大集団では達成されにくいというものです。小集団であれば

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  • ヤン・ド・フリース『勤勉革命』 - 西東京日記 IN はてな

    副題は「資主義を生んだ17世紀の消費行動」。タイトルと副題を聞くと、「勤勉革命なのに消費行動?」となるかもしれません。 「勤勉革命」という概念は、日歴史人口学者の速水融が提唱したものです。速水は、江戸時代の末期に、家畜ではなく人力を投入することで収穫を増やす労働集約的な農業が発展したことを、資集約的なイギリスの産業革命と対照的なものとして「勤勉革命」と名付けました。 書によると、この労働時間の増大は17世紀後半のオランダにも見られるといいます。著者は、およそ1650〜1850年の時期を「長い18世紀」と呼んでいますが、この時期、世帯単位の労働時間は増えていきました。 この時期のオランダで「勤勉革命」などと言うと、マックス・ウェーバーを読んだ人であれば「プロテスタンティズムの影響?」と思うかもしれませんが、著者が書で指摘する要因はずばり「消費」です。 この時期のオランダでは、陶器

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  • アン・ケース/アンガス・ディートン『絶望死のアメリカ』 - 西東京日記 IN はてな

    『大脱出』の著者でもあり、2015年にノーベル経済学賞を受賞したアンガス・ディートンとそので医療経済学を専攻するアン・ケースが、アメリカの大卒未満の中年白人男性を襲う「絶望死」の現状を告発し、その問題の原因を探った。 この絶望しに関しては、アビジット・V・バナジー& エステル・デュフロ『絶望を希望に変える経済学』でもとり上げられていますし、大卒未満の中年白人男性の苦境に関しては、例えば、ジャスティン・ゲスト『新たなマイノリティの誕生』でもとり上げられています。学歴によるアメリカ社会の分断に関しては、ピーター・テミン『なぜ中間層は没落したのか』も警鐘を鳴らしています。 そうした中で、書の特徴は、絶望死についてより詳細に分析しつつ、対処すべき問題としてアメリカの医療制度の問題を指摘している点です。 例えば、ピーター・テミンはアメリカ社会の分断に対する処方箋として、公教育の充実、大量投獄か

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    harumanachika
    harumanachika 2021/04/04
    “最後にディートンが『大脱出』につづき、RCTに対して疑問を呈している一節を紹介しておきます。”
  • 山口慎太郎『子育て支援の経済学』 - 西東京日記 IN はてな

    『「家族の幸せ」の経済学』(光文社新書)でサントリー学芸賞を受賞した著者による、子育て支援の政策を分析した。 『「家族の幸せ」の経済学』も面白かったのですが、個人的にはマッチングサイトや離婚の話などは置いておいて、もっと著者の専門である子育て支援政策の分析に絞ったほうが良かったのでは、という感想も持ちました。そうした意味では個人的には待ち望んでいたです。 書は『経済セミナー』の連載をもとにしたものであり、新書である『「家族の幸せ」の経済学』に比べると、研究の方法・技法の紹介に大きく紙幅を割いています。「この研究によるとこういった効果がありますよ」と紹介するだけではなく、「この研究は問題を明らかにするためにこういった技法が使われており、それによるとこういった効果がある」という形で研究のやり方が妥当であるのかということも含めて検討されています。 中室牧子・津川友介『「原因と結果」の経済学

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  • 酒井正『日本のセーフティーネット格差』 - 西東京日記 IN はてな

    副題は「労働市場の変容と社会保険」。この書名と副題から「非正規雇用が増える中で社会保険がセーフティーネットの役割を果たせなくなってきたことを指摘しているなのだな」と想像する人も多いでしょう。 これは間違いではないのですが、書は多くの人の想像とは少し違っています。「日の社会保険の不備を告発する」とも言えませんし(不備は指摘している)、「非正規雇用の格差を問題視し日的雇用の打破を目指す」といったでもありません。 書はさまざまな実証分析を積み重ねることで、この問題の難しさと、改革の方向性を探ったものであり、単純明快さはないものの非常に丁寧な議論がなされています。特に仕事と子育ての両立支援を扱った第3章と、若年層への就労支援などを論じた第6章、最近流行のEBPMについて語った第7章は読み応えがあります。 目次は以下の通り 序章 日の労働市場と社会保険制度との関係 第1章 雇用の流動

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  •  ジェイン・ジェイコブズ『市場の倫理 統治の倫理』 - 西東京日記 IN はてな

    アメリカ大都市の生と死』で知られるジェイコブズが社会における2つの道徳体型について語った。以前から読みたいなと思って、古屋などで探していたのですが、今年の2月にちくま学芸文庫から復刊されたので読んでみました。 このの、「道徳体型には市場の倫理と統治の倫理という2つのものがあって、それが混ぜ合わせると腐敗が起きる」という基的な主張は知っていたのですが、このが対話篇の形式を持つだとは知りませんでした。 プラトンの書いた対話編と同じようにある主張が厳密に証明されているわけではないのですが、とり上げられている問やエピソードには広がりがあり、良い意味で「哲学的」なになっていると思います。 世の中には、道徳的な価値が衝突するケースがあります。例えば、このの冒頭では製材会社の森林破壊を告発するために、テレビ局をだましてそれを報道させるという話が登場人物から語られます。 これによって森林

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