長生きしていると善し悪しは別にして、様々な変化に巡り合う。人生82歳まで生きたとしても日数ではせいぜい三万日前後。 こう考えてみると長いようでも短いのが人生だが、同じ三万日でもいまの日本で長生きしているもと少年、いまジーさんたちは日本の長い歴史のなかで最も変化に恵まれた世代と言えるだろう。 子供時代は戦前の国民学校と呼ばれた小学校の低学年では神国日本、鬼畜米英と教わり、昭和一桁生まれの人たちは戦争に駆り出された。敗戦後今度は一転してマッカーサー万歳、侵略国家日本、同志ソ連などと教育され、紙不足で戦前の教科書を具合の悪い箇所は墨で黒々と消して使い、食糧不足で賞味期限なんて関係なく、喰えるものは何でも取り敢えず口に入れ飢えをしのいだものだ。気の毒なのはもと軍人で白眼視されるという極端な変わりようだった。そこで世界はひっくり返る経験をした。 貧しい家にあるのは裸電球とピーピー鳴るラジオぐらい。お