そこは自由な町だ。働く必要がない。 面倒な通勤もタイトな納期も威張りちらす上司もうるさい顧客もかったるい同僚とのつきあいもすべておさらば。趣味にかまけたり友人と語らったり気まぐれに遊び歩いたり、のんしゃらんで一生暮らせる。 そんなステキな町に住む条件はただひとつ。自分の情報への無制限アクセス権を情報銀行へ預けるだけだ。住民はつねにシステムに監視されている状態。どんな本を読みどんな音楽を聴きどんな言葉を語っているか、すべて吸いあげられデータ化される。当初はプライベートゾーンとされた寝室も、二階暗号化技術の発達により----つまりセキュリティが確保されデータの外部流出の不安がなくなった----監視範囲に組みいれられてしまう。見ているのはシステムだけなのだからかまわないという理屈だ。 かろうじて浴室とトイレは監視外になっているが、それとて長時間とどまるとアラームが起動する。トイレ滞在時間が正規分
![【今週はこれを読め! SF編】高度情報管理社会における「自由」の意味を問う - 牧眞司|WEB本の雑誌](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/b57670f9f997ffc1bd4fb183a7295be3d47aadcf/height=288;version=1;width=512/http%3A%2F%2Fwww.webdoku.jp.s3.amazonaws.com%2Fnewshz%2Fmaki%2Fassets_c%2F2015%2F12%2Fyuto-thumb-255x400-9286.jpg)