・神隠しと日本人 異界研究の第一人者が、神隠しにまつわる神話や伝承、そして現実の神隠し事例を研究することで、日本の村社会における「神隠し」の役割と機能に迫る。意外に人間的で現実的なオチになる。 「民俗社会における「神隠し」とは何なのだろうか。極端な言い方をすれば、それは現実の世界での因果関係を無視して、失踪事件を「神隠し」のせいにしてしまうことなのである。村びとたちは自殺も、事故死も、誘拐も口減らしのための殺人も、身売りも、家出も、道に迷って山中をさまよったことや、ほんの数時間迷い子になったことまでも、「隠し神」のせいにしてしまおうとしていたのである。」 神隠しの多くが、事実を隠蔽するためのヴェールとして使われ、その真意は「失踪者はもう戻ってこないと諦めよ」ということを遠回しに伝えることにあった。辛い現実を突きつけられるよりも「神隠しにあったのだ」で失踪を異界へ放り投げたほうが、慰めになる