日本の労働者の賃金はバブル崩壊以降増えていない、とはよく言われる。しかしこの10年で、非正規として緩やかに働く主婦や年金を受給しながら働く高齢者が増えていることから、「平均賃金」が上がらないのは当然といえるかもしれない。賃金増加の恩恵にあずかっている人も確かに存在している。では、賃金が上がっていないのは…。リクルートワークス研究所研究員の坂本貴志氏が解説する。 ※本連載は、書籍『統計で考える働き方の未来 ――高齢者が働き続ける国へ』(筑摩書房)より一部を抜粋・再編集したものです。 近年の賃金の推移をたどっていけば、賃金が増えないという主張は必ずしも現状を正確に表したものとはいえない。賃金が増えていないことをもって日本の未来に対して鬱屈とした気持ちを持つ人もいるが、未来はそこまでに暗くはないのである。 さらに、属性別に賃金の変化を丁寧にみていけば、その人の有する属性によって様相がだいぶ変わる