Wikipediaの大江健三郎の項目に次のような一節がある。 秦郁彦は、1967年の中国の核実験の成功について大江が「(キノコ雲を見守る中国の研究者らの表情を)いかにも美しく感動的であった」と評していることを批判した[21]。 (大江健三郎 - Wikipedia,太字による強調は引用者) これだけ読むと大江が中国の核実験を賛美していたように思える。実際そのように解釈して批判している人がweb上には多い。 この言葉が実際にどのような文脈で書かれたのか、以前から確認したいと思っていた。 そこで、図書館で、元の文章を探して読んでみた。 問題の文章は岩波書店『世界』の1967年9月号に掲載された、『パール・ハーバーにむかって -アメリカ旅行者の夢 IV-』と題されたエッセイだ。 アメリカのナンタケット島に行った時の記憶から語りだされ、『白鯨』の話から核時代、戦争における憎悪の連鎖についてというふ