人間が高みを目指すのは、 そこからどんな景色が見えるのかを確かめるためだ。 乳幼児だって、例外ではない。 むしろ乳幼児だからこそ、 無垢な好奇心のおもむくまま、 望む高みがそこかしこにあるといっていい。 それはたとえばソファであり、 たとえばちゃぶ台である。 自らの能力を活用し、 手がかり足がかりを探し出して、 登頂という達成を手に入れる。 それがたとえ小さな頂であったとしても、 踏破する経験と喜びを知ることが重要なのだと思う。 君にはそうやって、 何度となく転げ落ちてもいいから、 小さな頂を幾多と越えて、 自分の高みを目指す人間になって欲しい。 と、父は願う。 ただ、 今は、階段だけはやめたほうがいいと思う。 人間が高みを目指すのに理由はいらないが、 無事に戻ることには大切な理由がある。 それは、君の事を案じ、待っている人がいるからだ。
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