げんは1974年、浜松市で生まれた。小さい頃に両親が離婚し、母方の祖父母のもとで育てられた。現在60代後半で樹木希林に似た風貌の母親は「物怖じしない子だったね。夏は素っ裸になって走り回って、知らん人が来ても一番に飛び出していくようなね」と、げんの幼少期を振り返る。当時からピンクやヒラヒラの服装には全く興味がなかった。 げんにとって、女子らしさを象徴する中学の制服は大きな苦痛だった。「中学の入学式が近づくと、セーラー服を着るんだぞーとカウントダウンされてるみたいだった。中学に上がるときは絶望的な気分だったね」。髪形も小学生時代のショートカットからやや長くしておかっぱ風にしたが、それでも長髪にはしなかった。 「私はこの子がセーラー服がいやだって全然知らなかったよ」とげんの母親は言う。「いま思うと帰りはいつもジャージだったね。部活終わりでそのまま帰ってきたくらいにしか思ってなかったんだけど」。一