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ブックマーク / sakstyle.hatenadiary.jp (27)

  • 田口晃『ウィーン 都市の近代』 - logical cypher scape2

    19世紀から大戦間期にかけてのウィーン市政についての歴史 自由主義市政→キリスト教社会党市政→社会民主党市政という変遷を三部構成で追っている。 ウィーンという都市から見るヨーロッパないし中欧の近代政治史、とも言えるかもしれない。国政ではなく市政なので、時にかなり細かい話も出てくるけれど、人々の生活が多少は垣間見えるとも言えるかもしれない 世紀末から大戦間期のウィーンというと、哲学史的に言えば、論理実証主義やウィトゲンシュタインがいるし、フロイトもいるし、もちろん芸術分野には沢山いるし、経済学でもウィーン学派とかいるし、興味深い時代と場所なので、ちょっと何かしらを読んでみたいなあと思っていた あと、「シュピーゲル」シリーズの舞台も、ウィーン(作中では、ミリオポリスに改名されている)というのもあって、気になっている。 第1部 皇帝と市民のウィーン 第一章 都市ウィーンの生い立ち 第二章 市民

  • マーク・スタインバーグ『なぜ日本は〈メディアミックスをする国〉なのか』(中川譲訳、大塚英志監修) - logical cypher scape2

    におけるメディアミックスについての歴史研究の。 全6章のうち、前半の3章は『鉄腕アトム』におけるキャラクター玩具の展開に、メディアミックスの起源を、後半の3章では、角川の社史を追う形で、角川が成立させたメディアミックスという手法の展開を見ていく。 筆者のマーク・スタインバーグは、『アニメ・マシーン』のトーマス・ラマールの弟子。カナダの研究者で、元々日の伝統文化に関心を持っていたが、来日してキャラクター文化やメディアミックスに興味が移ったらしい。結婚相手が日人で、その方も書の翻訳に協力している。 大塚英志が、初めて海外で講演することになった際に関わっており、そこから交流が始まり、書の監修として大塚の名前がクレジットされている。 特に前半部分がとても面白くて、ちゃんとまとめたいと思っていたのだけど、最近の暑さでブログ書く方にまで手が回りません 第1章 動かさないことが「アニメ」を

    マーク・スタインバーグ『なぜ日本は〈メディアミックスをする国〉なのか』(中川譲訳、大塚英志監修) - logical cypher scape2
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    headless_pasta 2018/07/27
    目次が大塚英志っぽい。読んでみよう。
  • 『ブレードランナー2049』 - logical cypher scape2

    『メッセージ』 - logical cypher scapeのドゥニ・ヴィルヌーヴ監督による、『ブレードランナー』続編 『メッセージ』の映像・音響に魅力を感じていたので、作でも、引き続き同様の方向での映像・音響を鑑賞することができて満足。 ちなみに、自分は『アンドロイドは電気羊の夢を見るか』も読んだし、前作である『ブレードランナー』も見たはずなのだが、ほとんど内容を覚えておらず、そういう状態で見に行った。 以下、ネタバレこみで、思いついたところから感想をがりがりと書いていく。 映像・音響 映像というか画面の美としては、グルスキーっぽい感じがあるように思えたシーンがいくつかあった。 代表的なものとしては、冒頭の、予告編にも使われている、円形に並んでいる太陽光発電の空撮ショット(映っているモノよりも先にその幾何学的模様に目がいく点) 孤児院のところも、ちょっとグルスキーっぽいと言えないことも

    『ブレードランナー2049』 - logical cypher scape2
  • 冲方丁『テスタメントシュピーゲル』3下 - logical cypher scape2

    堂々の完結! 帯によれば、「10年がかり」とある。 自分は2009年からの読者なので、この物語との付き合いは8年ということになる。 これまでの感想 冲方丁『スプライトシュピーゲル』『オイレンシュピーゲル』 - logical cypher scape あんまりちゃんと感想メモ書けてなかったけど、読んだの記録1 - logical cypher scape(『テスタメント・シュピーゲル』1感想) 冲方丁『テスタメント・シュピーゲル2』上巻 - logical cypher scape 『テスタメント・シュピーゲル2』下巻 - logical cypher scape 冲方丁『テスタメントシュピーゲル』3上 - logical cypher scape 全てが落ち着くべきところに落ち着いた、まさに大団円 それはある意味予定調和なのだけれど、しかし、ここに至るまで、当にこの終わりにたどり着く

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  • 結城充考『躯体上の翼』 - logical cypher scape2

    BLAME!』と『ガルム・ウォーズ』と『ナウシカ』、そりゃ俺好きだわみたいな奴!! 読み始めてすぐに世界観に引き込まれていった。 出た当初からちょっと気になっていたのだけど、あとでいいかなと思っていたら、文庫化してた。単行出たのがもう3年前でちょっとびっくりした。 世界が炭素繊維躯体に飲み込まれて幾星霜、地上では、文明レベルの落ちた民が細々と集落を作って暮らしており、共和国と巨大企業佐久間種苗は、航空船団を使い、緑化政策と称して、自分たち以外の文化・文明を徹底的に駆逐しようとしていた。 互聯網(ネット)とか下載(ダウンロード)とか機毒(ウイルス)とか、中国語だったり中国語っぽい漢語だったりを使って、人名も漢字一文字で、世界観を出してる。必ずしも中華風ではないのだけど、漢語世界圏サイバーパンクになってる。 躯体上の翼 (創元SF文庫) 作者: 結城充考出版社/メーカー: 東京創元社発売日

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    headless_pasta 2016/09/30
    好みっぽい。買おう。
  • ウィリアム・H・マクニール『戦争の世界史』(上) - logical cypher scape2

    戦争にまつわる技術や産業の観点からマクロ的に世界史の流れ(特に西欧史)を見ていく。具体的な国名、人名、出来事名を追い掛けていくタイプの叙述ではなく、技術の発展などがどのようにその時代・地域の趨勢を変えていったかという叙述がなされる。 「戦争」と銘打っているが、戦史ではなくて、上述したように技術や産業、制度の歴史。また、技術といっても武器・兵器のみならず、組織経営の技術なども含まれる。 原著は1982年刊行、2002年に邦訳、2014年に文庫化されたもの。 長い記事になったので、上巻と下巻で記事を2分割 下巻はこちら→ウィリアム・H・マクニール『戦争の世界史』(下) - logical cypher scape 戦争の世界史(上) (中公文庫) 作者: ウィリアム・H・マクニール,高橋均出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 2014/01/23メディア: 文庫この商品を含むブログ (1

    ウィリアム・H・マクニール『戦争の世界史』(上) - logical cypher scape2
    headless_pasta
    headless_pasta 2016/06/27
    「読むCivilization」とも言われるマクニールの『世界史』は非常に面白かったのでこれもぜひ読みたい。
  • グレッグ・イーガン『ゼンデギ』 - logical cypher scape2

    タイトルは、ペルシア語で「life」の意味 舞台はほぼイラン マーティンとナシムという2人の主人公の話が交互に進む 2012年の第一部と2027-2028年の第二部の二部構成 第一部では、ジャーナリストのマーティンがイランの民主化革命を取材するパートと、10歳の頃にイランから亡命したナシムがMITでヒューマン・コネクトーム・プロジェクト(HCP)の研究を進めているパートが交互に進む。 この作品が書かれたのは、2009年なので実際のイランで起きたこととは違うが、オバマなどの名前が出てきたりして、これまでのイーガン作品の中ではおそらくもっとも現実世界と近い世界が描かれている。 第一部はほとんどイランでの革命がメインであって、あんまりSF成分はない 第二部では、マーティンは第一部で出会った運動を行っている女性と結婚し、テヘランで屋を営みながら、一人息子を育てている。 第一部の終わりで、経済学

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  • 宮田隆『分子からみた生物進化』 - logical cypher scape2

    分子進化学の入門 もともと『分子進化学への招待』というタイトルで出ていたの改訂版 分子進化学とはその名の通り、DNA、RNA、タンパク質といった分子を用いた進化学 この分野では、木村資生の中立説があまりにも有名 この分野のをほとんど読んでなかったので、知らないことが多くて、一方で最近読むようになった生物進化のと当然ながら繋がるところもあり、面白かった。 目次 分子進化の基的な概念と分子進化のしくみについて 第1章 ダーウィンと近代進化学の幕開け 第2章 遺伝のしくみ 第3章 DNAで進化をみる 第4章 遺伝子がもつ進化の情報を探る 第5章 分子進化の保守性 第6章 分子進化速度 第7章 インフルエンザウイルス=進化のミニチュア 分子進化機構に関する最近の発展 第8章 オスが進化を牽引する 第9章 類似を配列をコンピュータで探す―バイオインフォマティックスへの礎石― 第10章 コピー

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  • グレッグ・イーガン『白熱光』 - logical cypher scape2

    イーガンの長編宇宙ハードSF 奇数章と偶数章で交互に話が進む構成になっていて、奇数章はテクノロジーが進みまくってる遠い人類の子孫が未知の生命を探す話、偶数章は〈スプリンター〉という天体に住んでいる異星人が物理学の体系を編み出していく話。 この作品についてに自分の感想を先にささっと書いてしまうと 面白いことは面白かった。特に後半は引き込まれた。 とはいえ、この作品について十全に楽しめたわけではなく、中盤はちょっと退屈さも感じたところもないでもない。 面白いんだけど、胸をはって「これは超面白い作品です!」とは言えなくて、むにゃむにゃするって感じ。 twitter見てると、『ディアスポラ』越えたって声も結構見かけるんだけど、自分としては『ディアスポラ』越えられなかった感がある。 他のイーガン作品と比べてどうこう言ってみたい気持ちもあるのだが、自分が他のイーガン作品をわりと忘れていることに気付いた

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  • 大橋可也&ダンサーズ/飛浩隆『グラン・ヴァカンス』 - logical cypher scape2

    大橋可也&ダンサーズの『グラン・ヴァカンス』を見てきたのだが、それに先だって原作小説を再読したので、それについても書く。 ダンス版 土曜日の昼公演を見てきた まず、コンテンポラリー・ダンスを見るのがはじめて、なばかりか、そもそもダンスを舞台で見るということ自体が初めて*1。 なのでまずは、そもそもどうやって見ればいいのかというところから手探りだった。 客席の最前列とステージの高さが全く同じだった。ステージ右側に音楽担当が3人いて、右上にモニタがあり、左奥には大道具で部屋がつくられている。 音楽は、大谷能生が担当していて、サックスやウッドベースが生楽器として入っていた。エレクトロニカ的な感じの曲もあったと思う。ノイズミュージックといっていいのかどうか分からないけど、ノイジーな感じの曲もあった。 そうした音楽もよかったし、コンテンポラリー・ダンス独特の動きの緊張感みたいなものがあって、目が離せ

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    headless_pasta
    headless_pasta 2013/07/08
    ダンス作品を普段あまり観ない人によるダンス版『グラン・ヴァカンス』のレビュー。作品を観て自分が一番気になっていたところ。
  • さやわか『僕たちのゲーム史』 - logical cypher scape2

    遅ればせながら、各所で絶讃されてるこのを読んだ。 日テレビゲーム*1の歴史を、「ゲームとはボタンを押したら反応するものである」「ゲームは物語をどう扱うかについて時を追うごとに変化した」という二つのテーゼを軸に、語る。 何で日海外で人気のあるゲームが違うのか(TPSとFPS)ということについての説明にもなっているのが面白かった。 このは冒頭で、言及していないゲームの一覧が並べられている。ゲームについて詳しくない自分でも知っているような有名タイトルもたくさんある。そしてまた、著者曰く「僕が個人的に好きなゲームが、ほとんど登場しない」とも言っている。 つまりこのは、過去のゲームについて網羅的に言及しているでもないし、あるいは「僕たちの」という言い方から想像されるかもしれない「好きなもの」への想いを熱く語るようなでもない。 当時の雑誌やインタビューなどを引用しながら、上述した二

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  • 伊藤計劃×円城塔『屍者の帝国』 - logical cypher scape2

    なかなかどう感想を言えばいいのか難しい、のは多分この作品があまりに注目を浴びているからだ。 面白かったのは間違いないのだが、じゃあこれが伊藤計劃や円城塔のこれまでのテーマを昇華するような傑作なのかというとそこまで感じなかったのも正直なところなのだけど、一方で一読しただけではちゃんと掴めていないのではないかという疑念がぬぐえず、再読してから考えることにしたい。 とかく、色々なネタが詰め込まれているので、もう一度読み直したいなと思わせるのは確かである。 何やら堅苦しい始まり方になってしまったが、 既に何度か読んでいるプロローグを読み終わり、第一部を開くときの興奮といったら! 伊藤計劃と円城塔という2人の作家が、一般的に似ていると思われているのか、似てないと思われているのかよく分からないけれど、やはりこの2人は似ているのだと思う。 一部で、伊藤と円城の文体が噛み合ってない、円城が色々と無理をして

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  • グレッグ・イーガン『プランク・ダイブ』 - logical cypher scape2

    イーガンといえばアイデンティティSFといったイメージがあるが、訳者あとがきや解説にもハードSF寄りの短編集とあるように、むしろ数学や物理学をテーマとした、あるいは宇宙を舞台にしたSFが多い短編集だった。もちろん、今まで刊行されたイーガン作品でも数学は頻繁に登場していたし、宇宙を舞台にした長編もあるので、決して意外ではない。イーガン作品を既に多く読んでいる人には楽しめる短編集だと思うが、イーガンはまだあまり読んだことないという人には必ずしもお勧めしないかも。 以下、各編のあらすじと感想。あらすじは結末まで触れているので、未読の人は一応注意。 クリスタルの夜 仮想空間の中に人工生命を走らせて、人為的に進化させることで、知性、ひいては人類よりさらに発達した知能を作ろうとする富豪の話。 ある程度まで知性を手に入れた段階で、こちらの物理世界に干渉できるようなデバイスを与えて、仮想空間外の物理学も学ば

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  • 斎藤環『キャラクター精神分析』 - logical cypher scape2

    これまで出てきたキャラクター論のまとめをしつつ、斎藤環なりのキャラクターの定義を提案している。 個人的に、斎藤環のキャラクター論というのは以前から気に入っていて、このも面白く読んだ。 斎藤環の文章というのは、そこかしこにラカン派の言葉が出てくるため、そこで引いちゃう人もいると思うのだが、僕自身ラカンは斎藤環を通じてしか知らないけれど、それでも読めてしまうところがある。斎藤環の思考のフレームワークというのは確かにラカン派精神分析がなければ成り立たないのだが、しかし、彼のキャラクター論自体はラカン派の理論抜きでも理解可能なものとして出来ているのではないかと僕は思う。 このにも、無論精神分析の言葉は出てくるのだけど、の組み立てとしては、マンガ、小説、アートなどのキャラクターについての言説を読みながら、論を進めるものとなっている。 第1章 「キャラ」化する若者たち スクールカーストとかいじ

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  • 村上裕一『ゴーストの条件』 - logical cypher scape2

    ゼロアカ道場優勝者である村上裕一によるデビュー作。 これで長きにわたったゼロアカ道場企画も当に終結したと言える。 キャラクターというものが現代オタク文化の中で拡散している様をゴーストという概念で捉え直し、そのリアリティを批評している。 三部構成で成っており、第一部はアイドル論から接ぎ木する形でキャラクターについて、第二部は2chやニコニコ動画における創作からゴーストについて、第三部はノベルゲームなどの作品論を通じてキャラクターの生について論じられている。 なんだろうな、自分だったら絶対こうは書かないだろうとも思うのに、それから取り上げられている作品についても知らない*1ものの方が多いのに、すごく共感してしまうというか、考えていることが似ていると感じるところが多かった。 そういう意味で実に刺激的であった。 明晰さを追求する哲学・思考を触発する哲学 - Togetter というのがあって、

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  • P・W・シンガー『戦争請負会社』 - logical cypher scape2

    P・W・シンガー『ロボット兵士の戦争』 - logical cypher scapeに引き続きシンガー。 こちらの方が刊行は先。 これまた現代における必読書 PMF(民間軍事会社)というのは名前は知っていたし、アメリカ戦争の外注化が進んでいるのは何となく知っていたけれど、実際に読んでみると自分の想像以上であった。 イラク戦争において特に有名になったが、書はイラク戦争直前に書かれており、90年代におけるPMFの事例が書かれている。アフリカ、バルカン半島、中南米(というかコロンビア)あたりがメイン。あとはパプアニューギニアの事例も結構大きく取り上げられていた*1 ニュースだったり社会の教科書だったりで見知ったことのあるような、あるいはこので初めて知ったものもあるが、様々な紛争において既にPMFは大幅な関与をしており、こうした企業活動の影響抜きに紛争や安全保障を考えることができなくなってい

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  • アール・コニー+セオドア・サイダー『形而上学レッスン――存在・時間・自由をめぐる哲学ガイド』 - logical cypher scape2

    タイトルにあるとおり、形而上学の入門書である。 が、そもそも形而上学とはなんぞやというところが分からないとならないだろうが、それはそれ自体が一つのトピックになるほど、実は厄介であったりする。 とりあえず、訳者あとがきから要約しておくと、 形而上学とはまず哲学の中の一分野であり、わけても「時間」や「自由意志」や「必然性」などといったことを扱う哲学である。 「時間」や「自由意志」など誰もが哲学的だと思うトピックであろう。つまり、形而上学は、言うなれば哲学の中の哲学、「ザ・哲学」なのである。 さらに付け加えるならば、書が扱う形而上学は、分析哲学のスタイルで行われるそれである。それはすなわち、「アメリカン・スタイル」の形而上学のことである。 「アメリカン・スタイル」であるということは、分析哲学であるということに加えて、例えば「ターミネーター」などの例が使われていることや、過去の哲学者の引用が使わ

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  • テリー・ギリアム『ローズ・イン・タイドランド』 - logical cypher scape2

    ギリアムのアリス もっと、『パンズ・ラビリンス』みたいなのを想像していたのだけど、そうではなかった。 ってかすごい。 10歳の少女ジェライザ=ローズは、父親が売れないミュージシャンで両親が揃ってヤク中。 ってか、父親はヘロイン注射を娘にやらせてたりして、ひどい環境なんだが、映画が始まってすぐに母親がODで死んじゃう。父親とローズは、母親の死体放置して、父親の田舎へと。 大草原のど真ん中にたったあばら屋。祖母はもうとっくに他界しており、誰も住んでいないんだが、父親もローズもどうすることもできないのでそこに住み始める。 んだけど、父親もしばらくしてODで死んじゃう。 ローズは、ピーナッツクリームなんかを舐めながら、友達である人形の頭部と一緒にその草原で暮らし始める。 で、全身黒づくめの中年女性デルと出会う。デルもなんかちょっと頭おかしい人なんだけど、一応ローズに事とかは与えてくれる。ただ、ロ

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  • 長谷敏司『あなたのための物語』 - logical cypher scape2

    タイトルはテッド・チャンっぽくて、設定はイーガンっぽくて、病や死といった身体性をテーマにするあたりが伊藤計劃っぽいとなれば、そりゃもう読むしかないw とはいえ、読んでみての感想は、(ある意味当たり前だけど)そのどれでもない感じである。というか、正直なところ感想を書くのが難しい。 『あなたのための物語』を評価するのは結構僕自身は両義的である。「純文学」としては文章や描写が殺伐としている。「エンターテイメント」としては、展開などがフラットすぎる。しかしそのフラットさが、作中にもある「平板化」とあわせて、ある意味を持っているところが、評価の迷うところ。 http://d.hatena.ne.jp/naoya_fujita/20091028/1256730069 これは、id:naoya_fujitaの感想だが、確かに文章の上でもストーリーの上でも、言ってしまえば退屈なところがある*1。余命半年を

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  • 『社会は存在しない』限界小説研究会編 - logical cypher scape2

    サブタイトルに「セカイ系文化論」とある通り、セカイ系評論集となっている。 「何を今更セカイ系なんて」と思う向きにも、ちょっと立ち止まってもらいたい。 これは、セカイ系と称されてきた作品について論じる、というわけではなく、セカイ系という概念がどこまで使えるのかということをテストしているなのである。 では、何故そのようにしてセカイ系という概念をテストしなければならないのか。 そもそもセカイ系というのは、90年代後半からゼロ年代初頭にかけてのオタク的作品に見られた傾向に対して、揶揄的につけられた呼称である。ところが、ある時期までには軽蔑的なニュアンスはある程度まで薄れて、いわゆる「時代のリアル」を映している言葉として使われるようになっていった。 例えば、印象派という言葉もまた、揶揄的につけられた呼称であった。 セカイ系を印象派に喩えてみる、というのは、「何故今更セカイ系なのか」という問いに答え

    『社会は存在しない』限界小説研究会編 - logical cypher scape2