納得がいくロケ地を粘り強く探し続ける。選ぶのは郊外が多く、その土地の空気感が映画に滲み出る(撮影/写真部・松永卓也)この記事の写真をすべて見る 「ひとよ」の舞台となったタクシー会社。実際のタクシー会社の建物をほぼそのまま使い、ブルーシートで周囲を覆い撮影した。公開後、プロデューサーとともにロケ場所を提供してくれた人々へ挨拶にまわる監督は意外に少ない(撮影/写真部・松永卓也) 2013年に「凶悪」で映画監督としての地位を確立すると、「孤狼の血」「凪待ち」「ひとよ」など、話題作を世に出してきた。白石和彌さんは、映画とは「理不尽なもの、不条理なものを描くためにある」と言う。だから、暴力的な表現も蓋をせず描く。師事した若松孝二の「反権力」の精神も引き継いだ。表現の自由が危ぶまれる日本に危機感を抱き、理不尽さに声をあげる。 * * * 薄日が差す昨年12月のある日、白石和彌(しらいし・かずや 4