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  • 〈9〉シャアをつくった名台詞――到達点としての『機動戦士ガンダム』第1話|富野由悠季論|藤津 亮太|webちくま

    富野由悠季とはどんなアニメーション監督か。「演出の技」と「戯作者としての姿勢」の二つの切り口から迫る徹底評論! 書籍化にさきがけて論の一部を連載します。 今回はシリーズ「到達点としての『機動戦士ガンダム』第1話」最終回。第1話はなぜ視聴者を夢中にさせるのか。その魅力を演出面から読み解きます。(バナーデザイン:山田和寛(nipponia)) 前回「〈8〉アムロをどう演出したか」はこちら 初期設定のシャア 脚から絵コンテで大きく変わったポイントはもうひとつある。それは、アムロたちのライバルキャラクターである、ジオン軍の将校・シャアの描写だ。推測するに、おそらくシャアのキャラクター性は、脚段階ではそこまで明確に決まっていなかったのではないだろうか。 そもそも富野が書いた「ガンボーイ企画メモ」(※1)や「初期設定書」(※2)を見ても、シャアに関する記述は少ない。7ブロックに分けて書かれたスト

    〈9〉シャアをつくった名台詞――到達点としての『機動戦士ガンダム』第1話|富野由悠季論|藤津 亮太|webちくま
  • 二十一世紀の日本の首都に於ける超高層ビルの林立はその国の凋落を予言しているように思えてならない|些事にこだわり|蓮實 重彦|webちくま

    蓮實重彥さんの連載時評「些事にこだわり」第15回を「ちくま」9月号より転載します。延々とつづく渋谷駅周辺の再開発。東横線の地下化はじめ誰も便利になったとは思っていないはずの一連の大工事は都市再開発法によると「公共の福祉に寄与することを目的とする」そうなのだが、当に? との疑問についてお話しさせていただきます。 避けようもない暑い日ざしを顔一面に受けとめながら、タワーレコードの渋谷店で購入した海外の雑誌を手にしてスクランブル交差点にさしかかると、すんでの所で信号が赤となってしまう。階段を降りて地下の通路に向かう方法もあるにはあったが、年齢故の足元のおぼつかなさから灼熱の地上に立ったまま青信号を待つことにしていると、いきなり、かたわらから、女性の声がフランス語で響いてくる。ふと視線を向けると、「そう、シブーヤは素晴らしい」と「ウ」の部分をアクセントで強調しながら、スマホを顎のあたりにあてた外

    二十一世紀の日本の首都に於ける超高層ビルの林立はその国の凋落を予言しているように思えてならない|些事にこだわり|蓮實 重彦|webちくま
  • 綿野恵太『「逆張り」の研究』よりまえがきを全文公開|単行本|綿野 恵太|webちくま

    常識とは反対のありえない主張をする「逆張り」――元来は投資用語であった言葉が、昨今では悪口や罵倒、あるいは自虐的な言葉として用いられるようになりました。この言葉をめぐる「社会評論」であり「当事者研究」ともいうべき一冊、綿野恵太『「逆張り」の研究』が日発売となりました。『「差別はいけない」とみんないうけれど。』(紀伊國屋じんぶん大賞2020第2位)『みんな政治でバカになる』が大きな話題を呼んだ批評家が満を持して贈る2年ぶりの新著です。 二〇二二年四月、朝日新聞の記者からメールが届いた。「「逆張り」について三人の識者に意見を聞いています。取材させてほしい」というものだった。「逆張り」について記者はこんなふうに説明していた。 もともと「逆張り」は相場の流れに逆らって売買する投資手法のことだ。たとえば、株式市場で株価が低いときに買って、高いときに売る。だが、最近はインターネットでよく見られる「良

    綿野恵太『「逆張り」の研究』よりまえがきを全文公開|単行本|綿野 恵太|webちくま
  • 〈1〉推しの結婚相手が匂わせ女で、しんどいです……|あなたの悩み、世界文学でお答えします。|堀越 英美|webちくま

    「恋のツラみ」から「人づきあいのもつれ」、「職場でのつまずき」、「人生の難問」まで、世界文学をとおして、数々のお悩みに答えていく堀越英美さんの連載、始まります! 【お悩み】  推しアイドル結婚してしんどいです。嫉妬ではありません。すばらしい女性との結婚だったら、推しの部屋の壁になって二人のイチャイチャをずっと眺めていたいくらいです。でも結婚相手は、付き合っていることをSNSでこれみよがしに匂わせていたつまらない女なんです。私が推しにつぎ込んだお金が、匂わせ女の養分になるのかと思うと納得がいきません。 【お答え】 匂わせ女”とは正反対の、恋の火力を調整できる人間になろう! ◆〝強火〟のヒロインが恋した相手は…… あこがれの人が、気に入らない相手と結婚する。いくら不愉快でも、ファンの立場で-ことはあまりない。人の好いた惚れたは、いくら課金したところで、赤の他人がコントロールできるものではな

    〈1〉推しの結婚相手が匂わせ女で、しんどいです……|あなたの悩み、世界文学でお答えします。|堀越 英美|webちくま
  • 生活困窮者を前に新しい児童図書館は有効か①|重箱の隅から|金井 美恵子|webちくま

    隔月連載を一回休む(体調のせいによって)となると、なんとなく時間の流れが変化するという傾向があるのかどうかは、何度も経験したわけではないのでわからないものの、次回の連載に書くつもりでいた事に対して、熱意、、がなくなるような気分になるのはどうしたことか。 もちろん、この連載エッセイのタイトルから察せられるように、言い方を変えれば不要不急のことについて書いているわけなのだが、それ、、が一体いつ、、だったのか、その一部分を除いてすぐにはもう思い出すのが困難な、テレビ中継で見た殺害された元首相の、いつの間にか決まって、いつの間にか行われた国葬である。元文部科学事務次官の前川喜平のエッセイ(「ユウエンナルスメラミクニ」東京新聞 ʼ22年10月2日「音のコラム」)を読んで、自衛隊音楽隊が演奏していた儀式用らしき曲の正体がわかったのだったが、国葬について書かれた新聞記事もテレビのニュースでも、それが

    生活困窮者を前に新しい児童図書館は有効か①|重箱の隅から|金井 美恵子|webちくま
  • ウクライナ戦争が問う我々の人間性|ちくま新書|小泉 悠|webちくま

    ちくま新書『ウクライナ戦争』の著者・小泉悠氏が、戦争について、人間について、悪について、子供たちについて、その質を率直に語った貴重なエッセイ。PR誌「ちくま」1月号より緊急転載いたします。 戦争という現象にはいろいろな顔がある。直接の戦争経験を持たず、軍事オタクとして生きてきた筆者が戦争と聞いてまず思い浮かべてきたのは、「戦闘」だった。巨大な軍隊同士が火力や機動力を発揮して敵の殲滅を目指す暴力闘争。これは間違いなく戦争の一つの顔ではある。 しかし、12年前に子供を持ってから、戦争の別の側面を意識するようになった。子供という、この弱くて壊れやすいものを抱えながら生きていくということは、平時の社会においてもなかなかに緊張を強いられるものがある。すぐに熱を出す、とんでもないことで怪我をする、迷子になる。そういう子供との暮らしに、爆弾が降ってくるのが戦争である。あるいは、子供にべさせるものがな

    ウクライナ戦争が問う我々の人間性|ちくま新書|小泉 悠|webちくま
  • 家庭と仕事をめぐる問題はなぜややこしいのか?|ちくま学芸文庫|筒井 淳也|webちくま(1/3)

    「会社のファミリーフレンドリー制度が充実していても利用しない人がいるのはなぜか」という問いから「家庭とはなにか?」「仕事とはなにか?」という根源的な問いを掘り下げていった、ホックシールド『タイムバインド』。この解説を社会学者の筒井淳也さんに書いていただきました。これを読めば、これらの問いが持つ意味が深まります。 「はじめに」の終わりの方で、著者のホックシールドは「家庭とは何か?」「仕事とは何か?」という問いを投げかけている。たしかに書は、ワーク・ライフ・バランスについてのみならず、この根的な問いについて考える上で示唆的なエピソードをたくさん含んでいる。解説の場を借りて、この問いを追求してみたい。 書では、著者であるホックシールドが「アメルコ」社員の生活を観察する中で見出した、ある重要な謎(パズル)が提示される。そのパズルとは、「会社のファミリーフレンドリー制度が充実していても、利用し

    家庭と仕事をめぐる問題はなぜややこしいのか?|ちくま学芸文庫|筒井 淳也|webちくま(1/3)
  • アカデミー賞という田舎者たちの年中行事につき合うことは、いい加減にやめようではないか|些事にこだわり|蓮實 重彦|webちくま

    蓮實重彥さんの短期集中連載時評「些事にこだわり」第7回を「ちくま」5月号より転載します。2022年3月、北米の一角のお祭り騒ぎと無縁に起こってしまった真の映画史的損失について――。 一応は大スターと呼んでおこうウィル・スミスさん――新聞の表記に従う――によるさるコメディアンの顔面平手打ち事件で記憶されることになりそうな今年のアカデミー賞授賞式だが、それ以前から令和日のマスメディアはかなりの盛りあがりを見せていた。それは濱口竜介監督の名前が複数の部門に候補として挙げられていたからにほかなるまいが、いったんノミネートされたからには貰っちゃうにこしたことはないのだから、『ドライブ・マイ・カー』(二〇二一)で「国際長編映画賞」を手にして、お前さんがオスカーかよとつぶやいた濱口監督にとって、それはひとまず目出度いことだったといってよかろうと思う。 おかげで、日国の某官房長官までがしゃしゃり出て、

    アカデミー賞という田舎者たちの年中行事につき合うことは、いい加減にやめようではないか|些事にこだわり|蓮實 重彦|webちくま
  • ノーベル賞が「些事」へと堕してしまう悲惨さについて|些事にこだわり|蓮實 重彦|webちくま

    蓮實重彥さんの短期集中連載時評「些事にこだわり」第5回を「ちくま」1月号より転載します。昨年の真鍋淑郎氏のノーベル物理学賞受賞に際し、例のごとく繰り返された「「日人」が受賞!」の大騒ぎ。そこで覆い隠されるもろもろについてこだわります。 ノーベル賞というものが「些事」に類することがらかどうか、それはもとより確かなことではない。ところがいったんそれが報道されたとなると、日では、その過程で、一挙にまぎれもない「些事」の域に転落してしまう場合がほとんどである。 例えば、二〇二一年度のノーベル物理学賞は、Mr. Syukuro Manabeというアメリカ国籍の研究者に、ドイツとイタリアの研究者と同時に授与された。ところが、その事実を伝える日のマスメディアの報道は、あたかも日国籍の研究者がたったひとりでそれを受賞したかのように興奮しきっている。これは、醜いというより悲惨な事態だというべきである

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  • 「知恵の輪熊」の可愛らしさは誰にもわかるまい|些事にこだわり|蓮實 重彦|webちくま

    蓮實重彥さんの短期集中連載時評「些事にこだわり」第4回を「ちくま」11月号より転載します。東京または全国各地で、ハクビシンや猿、猪や熊などさまざまに出没する野生動物たち。しかしいかなる動物にもまして魅惑的なのは、幼児のおぼえちがいから生まれた「知恵の輪熊」なのでした――。 いまからかなり前の二十世紀の終わり頃だったと思うのだが、と二人で遅い夕のテーブルを囲んでいると、ふと何やら気配を察して思わず瞳をあげ、隣家をへだてるコンクリートの壁が見える小さな窓に視線を送る。すると、何やら大型の――明らかにではない――動物がこちらをじっと窺っているではないか。その不気味に輝く瞳と目があうと、相手は動こうともせずにじっとこちらを見すえている。このあたりにはあまり目にしたこともないのに、あれは間違いなく狸か狢だと確信し、に目を向けてみよとうながすと、あっと口にするなり、フォークを持つ手をとめてしま

    「知恵の輪熊」の可愛らしさは誰にもわかるまい|些事にこだわり|蓮實 重彦|webちくま
  • 「バーカ!」といっておけばすむ事態が、あまりに多すぎはしまいか|些事にこだわり|蓮實 重彦|webちくま

    蓮實重彥さんの短期集中連載時評「些事にこだわり」第6回を「ちくま」3月号より転載します。振り込め詐欺詐欺からデジタル庁、そして海のこちらとあちらの首相たち……些事たちが深刻ぶってざわめくこの世界に投げかけるべき言葉とは――。 このところ、固定電話器にかかってくる電話など碌でもないものばかりだ。実際、ついさきほど、拙宅の前の通りをどうやら警察の車輛が通っていたようで、今日はこの界隈に振り込め詐欺の電話が多くかかっているので、不審な者を見かけたらご一報願いたいとスピーカーで述べたてている。そのとたん、いきなり固定電話のベルが鳴るので息を殺して受話器を取り上げると、それはほかでもない、旧知の映画作家からだった。わたくしのスマホにかけてくれたが、なかなか出ないのでつい固定電話にしてしまったとのこと。だが、すぐには名前が確認できず、失礼な対応をしてしまったかもしれない。事情を説明すると、相手も笑って

    「バーカ!」といっておけばすむ事態が、あまりに多すぎはしまいか|些事にこだわり|蓮實 重彦|webちくま
    helioterrorism
    helioterrorism 2022/04/22
    還付金詐欺の電話に「バーカ!」と言い捨てる蓮實重彦。
  • 蓮實先生と私|単行本|青山 真治|webちくま

    僕らは教室にいた。と、そこへ先生がはいって来て、いまちょうど三十年が経過したけれど先生のお姿は何も変わっていない。先生が毎年最初の授業で出す映画クイズのその年の第一問は「P.C.L.とは何か」で、三十年前それについての知識が皆無だった者が三十年の間に世界最大の音響機器メーカーに売却されたそのフィルム現像の企業を職場とした経験を持ったどころか業界の総デジタル化によってその業務に実体を失ったいまも会社は自宅近所にその名を残して存在する。もしあれから変わったことがあるとすれば先生と親しく、といってもこちらは相変わらず他の誰に対してより圧倒的に緊張しながらであるが、ともあれ言葉を交わしたりメールを交換したりするような関係を得たことであり、それもこちらが映画監督を名乗り始めたここ十年のこと。そんな関係の最初の話題が長嶋茂雄についてだったのはそれが神宮球場の近くだったせいだろうか。あるいは当時の六大学

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  • File59.ちゃんとできない自分、に囚われてしまったときに読む本|昨日、なに読んだ?|光宗 薫|webちくま

    紙の単行、文庫、デジタルのスマホ、タブレット、電子ブックリーダー…かたちは変われど、ひとはいつだってを読む。気になるあのひとはどんなを読んでいる? 各界で活躍されている方たちが読みたてホヤホヤをそっと教えてくれるリレー書評。 「生きてるだけで、愛。」を初めて読んだのは文庫が発行されてから間もない頃だった。 暫くまともに連絡をとっていなかった姉から、「このの主人公が薫っぽかった。」と連絡がきたのだ。 ほかに何の前情報もないまま、主人公が自分っぽいらしいという興味から屋で購入して一気に読んだ。 昔から、自分は浮いているように感じる場面が多かった。それは決して自分が特別な存在だとかそういう優越感ではなく、 「なんでお前みたいなのがここに当たり前のような顔して居座ってんだ」 と頭の中で誰かに言われているような感覚だった。 同時に、何かの一員になる、仲間になる、苦楽を共にする人間関係を

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  • 「コロナ後の世界」には女はいない、あるいは、分別と多感③|重箱の隅から|金井 美恵子|webちくま

    原爆記念日に、NHKが特集番組を放送しなかった昭和53年はどういう年であったのかを思い出そうとして、つい「村上春樹さん首相を批判」と無邪気に感心する無気味な新聞記事を引用して枚数が尽きてしまったのだった。 ’78年と表記するより昭和53年と書いたほうが、もちろんふさわしいのだが、その3年前、在位50年を記念した記者会見で、象徴、、ではない国家の権力者の天皇の「戦争責任」という概念を、文学的、、、なものとしてまともに答えず、原爆投下をやむを得ぬことと発言し、3年後の昭和53年10月、靖国神社は、東條英機、広田弘毅らA級戦犯14人を合祀するのだが、当然天皇の記者会見での発言の影響があるだろう。半藤一利の『マッカーサーと日占領』(PHP研究所、平成28年)を引用して江橋崇は『日国憲法のお誕生――その受容の社会史』(有斐閣、令和2年)に、合計11回以上の会見を通して、昭和天皇がマッカーサーに対

    「コロナ後の世界」には女はいない、あるいは、分別と多感③|重箱の隅から|金井 美恵子|webちくま
  • 「コロナ後の世界」には女はいない、あるいは、分別と多感②|重箱の隅から|金井 美恵子|webちくま

    30年前の1991年8月19日のクーデター未遂事件によって、超大国ソ連崩壊の引き金が引かれた、と語られる歴史をふりかえるといった類のテレビ番組や新聞の特集記事を目にすることが極端に少なかったのは、もちろん、コロナとオリンピックのせいなのだろうが、数少ない記事の一つを目にして、私が思い出したのは、ソ連クーデター未遂事件というより、それを伝えるNHKテレビのニュース映像というか、や、り、方、である。 たしか、現、場、の、中、継、で放送された生、々、し、い、映、像、は、NHKのモスクワ支局(おそらくクレムリンとそう離れてはいないビルの5階かそこらにあるらしい)の外に明りが漏れるのを恐れるかのようにブラインドが閉ざされた窓辺で支局長(時期が時期だけにニュースの度に登場していた)がブラインドをわずかに手で押し開き、その隙間を覗き込むようにして、ああっー、と驚きの絶叫があって、見えます、見えます、装甲

    「コロナ後の世界」には女はいない、あるいは、分別と多感②|重箱の隅から|金井 美恵子|webちくま
  • 「コロナ後の世界」には女はいない、あるいは、分別と多感①|重箱の隅から|金井 美恵子|webちくま

    「第一戦で活躍する12人の知性による、圧倒的熱量の論集!」の中に女性執筆者が一人も入っていないので、書名であることを超えて『コロナ後の世界』(筑摩書房編集部編)には、女性は存在しなくなると、作った編集部は考えている(と、いう程のことではなく、まるっきりの無意識)のかもしれないこのは昨年の9月に上梓されたのだが、もちろん、収められた文章が書かれた時期と現在では、様々な状況が変わっているので、簡単に何かを言うことはできないのだが、こういうがあることを思い出したのは、コロナ・ワクチンの大規模接種が自衛隊の力を借りて行われた5月24日、菅首相が記者たちに向かって、奇妙な薄笑い――笑うのをケチっているような――を浮かべて「なんとなく、、、、、ホッとしている」と発言したからである。 それがどう12人の知性(第一線で活躍する)と結びついたのかは後ほど説明することになると思うが、ここではとりあえず、女

    「コロナ後の世界」には女はいない、あるいは、分別と多感①|重箱の隅から|金井 美恵子|webちくま
  • 『現代文解釈の基礎』と出会って、僕は人になろうと思った|『現代文解釈の基礎』と出会って、僕は人になろうと思った|読書猿|webちくま

    現代文の名参考書として知られる、遠藤嘉基/渡辺実 著『着眼と考え方 現代文解釈の基礎〔新訂版〕』が、10月11日にちくま学芸文庫より文庫化して刊行されました。文庫化発表直後から大反響となり、またたく間に3万部を突破。大きな反響の火付け役は、ベストセラー『独学大全』(ダイヤモンド社)で10ページ以上にわたり書を紹介した読書猿さんでした。書の解説も手掛けられた読書猿さんに、『現代文解釈の基礎』への熱い思いと、復刊までの道のりをインタビューしました。 聞き手:斎藤哲也さん(ライター・編集者)&筑摩書房編集部 ▼復活劇の舞台裏 ――今回、ちくま学芸文庫から『現代文解釈の基礎』が復刊されることになりました。読書猿さんのツイートが弾みとなって、ちくま学芸文庫としては異例の初版部数であるばかりか、発売前に重版が決まったとうかがっています。 読書猿さんは、『独学大全』にある国語の独学法を指南するパート

    『現代文解釈の基礎』と出会って、僕は人になろうと思った|『現代文解釈の基礎』と出会って、僕は人になろうと思った|読書猿|webちくま
  • 「頑張ろう」などと口にするのはそろそろ止めにすべきではなかろうか|些事にこだわり|蓮實 重彦|webちくま

    蓮實重彥さんの短期集中連載時評「些事にこだわり」第3回を「ちくま」9月号より転載します。この夏は一生ぶんくらいの「頑張ろう」「頑張った」というフレーズを聞いた気がします。しかしそもそも「頑張る」という日語はなんなのか。結果の是非を視野から遠ざけ、主体を一様に無化する紋切型のおそろしさとは。 さる原稿の執筆にやや行きづまったので、パソコンの置かれた仕事机を離れ、サロンのソファに深々と身をうずめ、正式には禁煙したことになっているのに何のためらいもなく煙草に火をつけ、見るともなしにテレビをつけてしまう。すると、画面には、めっきりと髪の白さがきわだつピーター・フォークが、例のよれよれのベージュのコートをまとって慇懃無礼な質問を若い男に向けて呟いているので、ああ、『刑事コロンボ』の一挿話の再放映だなとすぐさま合点がゆく。見るからに怪しげなその若い男は、自分で設計したクラブのオープニングが迫っている

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  • 批評って何をするの?|ちくま新書|北村 紗衣|webちくま

    を読んだり映画を観たりしたとき、自分の考えたことを人に伝えたくなりませんか? そんなときに役に立つのが「批評」です。自分の分析を明晰にし、的確に伝える方法とは――。 9月刊行のちくま新書『批評の教室』より、プロローグを公開します。 俺はチョウのように舞い、ハチのように刺す。 (I’m gonna float like a butterfly, and sting like a bee.) これはボクシングチャンピオンだったモハメド・アリの有名な決まり文句です。モハメド・アリは強いボクサーである一方、アフリカアメリカ人として人種差別反対運動にも取り組み、気の利いた鋭い台詞でファンを喜ばせる機知に富んだ人物でした。この文句はアリのトレーナーだったドルー・バンディーニ・ブラウンが考案したもので、一九六四年にまだカシアス・クレイという名前で知られていたアリがソニー・リストンと対戦した時に初めて

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  • オリンピックなどやりたい奴が勝手にやればよろしい|些事にこだわり|蓮實 重彦|webちくま

    蓮實重彥さんの短期集中連載時評「些事にこだわり」第1回を「ちくま」5月号より転載します。東京オリンピックは2020のみならず1964もたいがいロクなものではなかった!? どちらかといえばスポーツが好きな人間なので、オリンピックという何やら禍々しい国家的な行事にはあまり関心が向かない。だからといって、その開催に断乎反対というほどの強い執着を持っているわけでもない。やりたい奴がいるなら勝手にやればよろしいというだけの話である。ただ、少なからず存在しているオリンピックへの無関心層を、「日の丸=君が代」騒動に巻き込むなとだけはいっておきたい。その思いは、例えばサッカーワールドカップについてもいえることで、国を背負って優劣を競いあう競技などと、選手たちがそれを意識した瞬間にスポーツであることをやめてしまう。 例えば、いま終わったばかりのサッカー2022カタール大会の二次予選で日がモンゴルを14対

    オリンピックなどやりたい奴が勝手にやればよろしい|些事にこだわり|蓮實 重彦|webちくま