書名からして含みがある。悪い言語を哲学するのか、悪玉の言語哲学があるのか、言語哲学の悪い入門なのか。「悪い」がどの語にかかっているようにも取れてしまい、言葉の複雑さを意識させられる。 本書では特に悪口について、言語哲学の手法を通して「なぜ悪口は悪いのか」「なぜあの言葉は良くてこれはだめなのか」を考える。「哲学の中でも難しいと言われがちな言語哲学を、もっとアクセスしやすくできないかと考えた」。新しい知見を盛り込んだ教科書にもなるよう構成した。 本文で<言語のダークサイドに立ち向かう際に、哲学が必ず役に立ちます>と説く和泉さん。言語哲学では、現象を科学的に捉える言語学的な分析が欠かせないが、哲学を加えることで、善悪や価値の判断にまで踏み込めるという。 悪口を成り立たせる要素はいろいろあるが「文字通りの意味と、発した目的や相手に理解された意味には大きなギャップがあることを分かっているだけでも違う