ここまであたらないものか。かつて、フランスのノーベル賞学者フランソワ・ジャコブはその著書『ハエ、マウス、ヒト』で、『予測不可能性は科学の性質に含まれている』と喝破した。もっとはっきり、科学予測は基本的に不可能である、と考えておいた方がよさそうだ。 1960年に出版された本の復刻版である。今はなき科学技術庁が『識者』に依頼し、来たるべき21世紀、40年後の社会における科学技術の成果について予測してもらったものである。大学教授などその道の錚々たる権威たちが執筆陣だ。 当時の大家たちであるから、ほとんどの方が亡くなっている。が、50年の時をへだて、復刻版の前文もオリジナルの前文と同じ人によって書かれている。それは、当時の科学技術庁長官、大勲位・中曽根康弘。二つの前文を読み比べてみるだけでもおもしろい。 オリジナルのプロローグタイトルは『二十一世紀巨峰へのベースキャンプ』。科学技術がいかに明るい未