概念的に汚いとか臭いとか思っているものでも、実はものすごく美しいんじゃないか――吉村萬壱×若松英輔(前編) 「『ボラード病』を読んで衝撃を受けた方、『虚ろまんてぃっく』ではショックで倒れ伏すと思います」と、担当編集者に言わしめた衝撃作を、気鋭の批評家はどう読むのか?「人間を、問い直す」と題した対談が10月6日にジュンク堂書店難波店で行なわれた。 『虚ろまんてぃっく』 (吉村萬壱 著)若松 今回の吉村さんの『虚ろまんてぃっく』には、いくつか重要なテーマがあると思うんですが、まずどうしても聞きたいと思ったのが「言葉」をめぐる問題なんですね。「言葉」への不信がこの小説を貫いている。 吉村 きれいな言葉ってありますやんか。「平和」とか「愛」とか、「友情」とか「思いやり」とか「絆」とか、僕にはそういった言葉に対するアレルギーがあるみたいです。特に最近は日本の首相、名前忘れましたけど(笑)、彼が言う言