実際に芸術批評が、いかにしてある種の規範的議論を実現し、どのような普遍性を打ち立てるのかを見るためには、社交界の役割に注目しなければならない。 フランス・オートクチュールの伝統に挑戦し、20世紀のファッションに多大な影響を与えたココ・シャネルの場合を取り上げてみよう。彼女のファッションは、女性の社会参加とそれに適した着心地という観点抜きには成立しない。コルセットでウエストを締め上げ、スカートをたっぷりと膨らますようなスタイルを一新したココ・シャネルは、初期のフェミニズムの文化闘争とともに進撃したのである。 シャネルの提示した文化的価値理念は、「客観的に」正しいとか間違っていると決定できるようなものではないだろう。それを好意的に見る人たちは、それと一体となった女性の社会参加を望ましいと考え、その生活スタイルに共感を持っていたのであり、その理念に加担することなしに、ただ趣味がよいとか悪いなどと