法の幻想を看破せよ ――共謀罪が施行されれば、数多くの志布志事件が捏造される 評者:宗近藤生 おそらく、多くの人は「志布志事件」とはどんな出来事だったのだろうかと思うに違いない。十四年前に起きた、一集落の住民が多数、一斉逮捕された奇妙な選挙違反事件といえば、その頃、新聞、テレビなどで集中的に取り上げられていたから、記憶を辿ることはできるはずだ。しかし、わたしは迂闊にも、本書を手にするまで、無罪判決が出たことは知っていたが、〈その後〉のことに関心を持ち続けることなく、今に至っていることを悔やんでいる。書名通り、終わってはいなかったのだ。そもそも事件は奇妙というよりは、極めて〈異様〉なものであった。 03年4月に行われた鹿児島県議会議員選挙で、曽於郡志布志町(現在は志布志市)在住の中山信一が、定数三の曽於郡選挙区から無所属で出馬したことから、この不可解な事件は始まったといっていい。曽於郡選挙区