啓蒙と霊性 小泉義之 一九六八年の学生運動は革命運動であった.それは七〇年を跨いで,労働運動へ波及する勢いを持っていたが,革命という出来事はついに起こらなかった.その原因は,運動内の自壊や転向に求められるのが常であるが,フーコーがそのコレージュ・ド・フランス講義録『刑罰の理論と制度』で強く示唆していたように,革命運動を阻止したのは,支配層による弾圧と抑圧であった.フーコーにとって,七〇年代初めは,革命運動に対する反動期であった. ただし,フーコーによるなら,反動期の支配の特質は,革命運動家を直接に弾圧するところにではなく,むしろ,強権的な弾圧を契機にして,革命運動周辺で蘇生していた反秩序的な有象無象,『狂気の歴史』で言うところの「非理性」の有象無象を一斉に抑圧するところにあった.まさにその抑圧を通して,司法的で刑法的なものは,道徳的な非難,道徳的な矯正,法と秩序の正義感覚と結び付いて,規律