写真を“表現”ではなく、世界を認識するための手段ととらえ、思考と実践の成果を発表していく写真家はそれほど多くない。山岸剛がその一人であることは、彼の前著『Tohoku Lost,Left,Found』(二〇一九年)を見ればすぐにわかる。この、東日本大震災の二カ月後から、東北・太平洋沿岸の風景を建造物を中心に撮影した写真集には、震災による破壊と復興の状況を克明に記録することで「建築という人工物を介して見えてくる自然の力」を見極めたいという意図が貫かれていた。 その山岸は、同年夏から東京、とりわけその「際(きわ)(エッジ)」にカメラを向け始めた。さまざまな要素を取り込むことができるパノラマ画面で撮影した「中央区築地・築地市場跡」の写真に、「東京が撮れた」という手応えを感じたからだ。以後、主に早朝に車で走り回りながら被写体になる場所を探し、手持ちで、時には三脚を立てて撮影するという行為を続けてい
リリース、障害情報などのサービスのお知らせ
最新の人気エントリーの配信
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く