巷間(こうかん)言われている俗説を著者は“ウソ”だと断言する。表層的に若者の読書習慣を推論するのではなく、各種の読書調査をもとに読書離れという言説自体が思い込みであることを論証し、その上で、読書調査で人気を集めるタイトルを自ら読み込んで内容を分析し、読まれる本の構造をあきらかにしたのが本書だ。
三月二十八日に七十一歳で亡くなった著者が、闘病中の二〇二二年二月から十月にかけて、編集者の鈴木正文氏を相手に二〇〇九年以降の歩みを口述したのが本書。〇九年には生い立ちからの歩みを収めた『音楽は自由にする』が出版されていて、本書はその続編にあたる。 評者は何度か旅をご一緒する機会に恵まれた。モンゴルに民族音楽を聴きに出かけたり、九州を縦断する植樹の旅に同行したり。そして人類の大陸移動史から細胞内のミトコンドリアにまで及ぶ話題の豊富さ、該博さに驚かされた。 本書にもその才人ぶりがよく現れている。『戦場のメリークリスマス』のメロディを三十秒ほどで思いつき、『ラストエンペラー』の映画音楽は二週間で作った。ポップスから前衛音楽までの作品の多彩さ。世界をまたにかけた活動ぶり。映画、美術、哲学、自然科学までの幅広い分野にわたる交友。そして膨大な読書量。 「売名行為」と揶揄(やゆ)されても脱原発デモに参加
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