村上春樹最新短篇集。場所も立場も語り口も変わってぎゅっと詰まった要素を堪能できるので短編が好きだ。タイトルになっている『女のいない男たち』は単に短篇集の中のひとつからタイトルをもってきただけではなく、この短篇集全体をつらぬくひとつのテーマ、視点になっている。むさ苦しい男たちばかりが出てきて汗臭い物語を展開するのかと思いきや、全編さまざまな形で女を失った男たちをウェットに描いていくのだ。男の精神的な脆さがさまざまなシチュエーションで味わえる短篇集になる。 まあ男と女の関係もいろいろあるものだと当たり前のことを読みながら思う。そりゃ人間の間のことなのだからいろんなことがある。出張から一日早く帰ってきてみたら妻が男とベットインしていた、だったり、癌が発覚してずっと連れ添うと思っていた、相性の良い相手が、あっという間に離れ離れになってしまったり。妻として関係を結ぶのではなく、不特定多数の相手とドラ