「托鉢でいただく食べ物が、めっきり減ったよね」 コロナ禍によって寺の生活になにか変化はありますか? まずそう尋ねると、笹倉さんは言った。 「チェンマイは観光で成り立っている町でしょう。でもホテルもレストランも、ほとんど旅行者はいない。寺の前で行われていたサンデーマーケットも、一時期は再開したんだけどね。年末からの感染拡大でまた中止になった」 歴史ある寺院群も閑散とし、周辺の大自然を巡るトレッキング客もいない。町を支える観光業は壊滅ともいえる状況だ。人々の生活はなかなかに厳しく、毎朝の托鉢にお布施として回せる食料がだいぶ減っているようだ、という。 「でもね、お布施は減ったけれど、お布施をしようって毎朝出てくる人の数は変わらない。それがタイなんだなあ」 とはいえ、お布施の減少は寺の「食卓」にも影響する。僧たちの食事は托鉢でもらったものだけでやりくりするのがタイ仏教の習わしだからだ。笹倉さんもそ