1. 世界に冠たる日本ゼネコンの技術力? 丸山眞男の『日本の思想』(1961)によれば、日本の思想というのは、学習した知識が雑多にあつめられているだけで、構造化もされておらず、学んでは忘れられるが、ときどき思い出として噴出するもののようだ。過去は思い出である。それは突如、復活する。前近代と近代はずるずると連続しており、それは思想の雑居や無限抱擁などとよばれる。 2020年開催の東京オリンピックをめざしての新国立競技場コンペの顛末は、この思い出の噴出であった。たとえば村松貞次郎の「設計・施工一貫を押す」という主張(『現代建築をつくる人々』1963)は、すこし形をかえつつデザインビルド方式にもどり、復活した。すこしおくれて1974年から神代雄一郎がしかけた巨大建築論争は、イラク出身建築家による最優秀賞作品(当選案)のスパン400メートル近いキールアーチや、そのスケールがもたらす周辺環境破壊への