生きることに理由や言い訳をつける生き物は人間だけで、僕は、人間を人間たらしめているそういった機能や行動を、美徳であると同時に欠点でもあるんじゃないか、と思っている。この夏まで僕は失業していた。辛いことの方が多い時期だったけれども、おかげで昼間の町並みの様子を観察することも出来たし、何人かの旧知の顔を見つけることも出来た。Tのお母さんもそんな旧知のひとりで、彼女は僕を見つけるなり「ま~立派になって」と言いながら僕の肩をパンパン叩いた。平日の昼間に、スヌーピーのTシャーツと麻のズボーンのコーデで、サンダルを引っかけている、無精ヒゲの中年男に「立派」って。おばさんも七十才を超えているはず。「ボケてしまわれたのか…」と愕然とした。Tは幼稚園から中学校の義務教育タイムまで一緒だった5人の友人のうちのひとりで、ボンクラ度合いでは僕といい勝負が出来る奴だった。ボンクラ同志、仲も良かった。一学年上のバカで